夜明けの書斎で

図書館の香りがする。

そんな場所であなたと二人読書をしていた。

二人だけの書斎、二人だけの空間。

本だらけの部屋で各々が物思いに耽る中、口を開いた彼はふと何を思ったのか奇麗だねとつぶやいた。

彼が指さしたその先には明けそうな夜があった。

少し明るくなってきた外は、キラキラとまだ星が瞬いていて、ゆっくりと時間が過ぎていく、

不思議な感覚に包まれながらそっと本を置き、彼の隣に座る。

彼の手がそっと膝に落ちる。そしてその手に重ねるように手を置いた。

二人で陽が上がるまでただ外を見る、それだけの時間。

こんな時間になるまで本の虫になっていたとは知らずにすぎていた時間。

この後の予定がないからこそこんな贅沢な時間の使い方ができるのだと、私たちは知っていた。

じりじりと陽が昇っていく。外がだんだんと明るくなり、早い人はもう起きる時間だろう。

ふと冷たくなった紅茶を飲み干し、食器を片付けに立ち上がる。

二人でならんで食器を片付けた後は手をつないで布団へと赴く。

ゆっくりと横たわり目の前に倒れた彼を見て微笑みかける。

いつの間にか手を放していて、開いた手で彼の頬を撫でれば少し嬉しそうに微笑み返してくる。


「おやすみ」


その言葉を伝えてから目を瞑り、ぎゅっと固く彼の手を取った。

夢の中でも会えますように。そう願いながら。

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短編集 りると @MikaNovelist

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