幼馴染に押し倒されて同居することになりました 最終回

「未来がそんなことを思っていたなんて考えてもなかった…… 改めてごめんな」


「私こそつっくんが私のことを邪魔なんて思ってるって勘違いしちゃってごめんね……」


 お互いに落ち度があったんだし謝りあったんだからこれで良しとしよう。 

 それにしても三週間入院か…… 先は長そうだな。 


「もう大丈夫だよ未来。 この話はここで終わりにしよう」


「でもつっくんの足がこんなんになっちゃったし……」


「安心しろ。 きっちり世話はしてもらうからな」


「も、もちろん!」


 そのくらいはしてくれないと困る。

 そういえば起きたばかりで気づかなかったけど俺はどのくらい寝ていたのだろう。


「それと未来。 俺っていったいどのくらい寝てたんだ?」


「えーとね、丸々三日かな」


「三日!? ずっとか!?」


「うん、ずっとー」


 嘘だろ…… そんなになるまで自転車をこいでたのかよ……

 というか今はお昼の二時でなんで未来がここにいるんだ?


「なあ未来。 お前、学校はどうした?」


「え、えーと……」


「なんで俺なんかのために残ってるんだよ。 未来は早く学校行ってこい」


「え!? 今から!?」


「当たり前だろ。 遅刻だろうが行ってこい、それで帰りに家からパソコンと筆記用具を持ってきてくれ」


 三週間も暇なら永遠に書き続けられるってことだろ? そういうことなら楽園じゃないか。

 最近サボっていて編集さんから怒られっぱなしだけど巻き返せるぞ!


「わかった…… 行ってきます……」


 ものすごく嫌そうに未来は病室から出て行った。

 さて、何をしよう。 

 未来が学校から帰ってくるのはおそらく四時近くだろう。 うーん…… どうしようか……


 プルルルルルル


「うおっ!」


 突然ベットの横にある机に置いてあったスマホが鳴り出す。

 相手は…… 編集さんみたいだ。


「もしもしー」


「海竜先生!? 足は大丈夫なんですか!?」


「え、なんで知っているんですか!?」


 もしかしてエスパーか何かなのか!?


「海竜先生のご家族の方から聞きましたよ。 まさか海竜先生にお姉さんがいるなんて……」


 ん? 姉だって? それってもしかして……


「その声ってどんな感じでした?」


「えーと、優しそうな感じで少し天然さが垣間見える感じでしたよ」


「そうですか…… それにしてもご心配ありがとうございます」


 やっぱり未来か。 まあ、三日も音信不通になったら編集さんも大変だろうし結果的に良かったのかな。


「いえいえ、こちらとしてもご無事で何よりです! 入院期間中でも無理せず書いてくださいね。 今月はあと十万字も残っているんですから」


「はい…… 頑張ります……」


 ブツッ


 まあ、こうなるよな。 サボっていた分書かなきゃな!


 プルルルルルル


 またかよ…… もう名前を確認するのもめんどくさいな……


「はいー」


「あ、紗月? 大丈夫なの?」


 母さんかよ……


「めっちゃ痛いけど無事っちゃ無事」


「あらそう。 こっちは夜の三時で眠いからもう切るわねー。 無事でよかったわー」


「え、ちょ」


 ブツッ


 まじかよ母さん…… 安否確認だけかよ…… まあ、いつもこんな感じだから慣れてはいるんだけど子供としては結構寂しいぞ……

 なんかまた疲れて来たな…… 死ぬほど寝たはずなんだけどまだ眠い。 未来が来るまで寝るとするか。




「、っくーん、つっくー、つっくーん」


「んん……」


「あ、起きたな」


 うわ、この声は…… 


「おはよう紗月! 随分と痛そうな足だな!」


「帰れゴリラ」


 なんで受付で追い返さないの? こんな見た目がイケメンなだけのゴリラなのに。

 まあ、そんなことは置いといて。


「杏樹まで来てくれたんだな。 ありがとう」


「もちろんよ。 まさか疲労骨折するなんてね…… 私が早く電話していればこんなことには……」


「杏樹のせいじゃねえよ。 俺が無理にでも探し続けた俺が悪いんだし」


 まあ、そのおかげで未来を見つけられたわけだしな。 


「うん…… お詫びと言ってはなんだけど休み分の勉強は見てあげるわね」


「あ、それは助かる。 ついでに未来も見てもらえ」


「えー! 私もなの!?」


 だって成績悪いだろうが。

 でもやっぱりこんなみんなで笑えるのっていいな、と改めて実感するな。





「じゃあ私たちはもうそろそろ帰るわね。 まだ安静にしてるのよ」


「じゃあな紗月。 気が向いたらまた来るからな」


「杏樹、ありがとうな。 勉強の件も頼むな」


 雄二は…… 知らん。

 俺がそう言うと二人は帰っていった。


「二人きりだね。 つっくん、ほんとに足大丈夫?」


「少なくとも未来がいなくなった時に比べれば痛くもかゆくもないな」


「つっくん……」


 ごめんなさい、言ったあとで何ですがとてつもなく恥ずかしい……


「そんな恥ずかしいことも言えるほどなんだね。 じゃあ私も。 私は世界一つっくんのことが好き!」


 ッ! 不意打ちはずるいだろ! なら反撃してやる。


「俺だって未来のことが大好きだぞ! 生涯ずっと一緒にいたいくらいな!」


 ガタッ


 あ、もしかしてこのパターンは……


「「あはは……」」


 雄二と杏樹が顔を赤らめながらドアから覗いていた。

 修学旅行の時と一緒じゃねえか……


 こうしてまた、いつもの日常が戻ってきた。

 まあ、まだ入院生活が続くだろうがきっと楽しいだろう。 みんなが遊びに来てくれるのだから。

 今年一年は色々あったな。 今度俺のこの一年について小説を書いてみようかな。 

 きっとタイトルはこうなるだろうな。


『幼馴染に押し倒されて同居することになりました』 




 ~~END~~

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幼馴染に押し倒されて同居することになりました 月猫 @Tukineko_satuki

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