とりあえずよかった……
「うおおおおお!」
もはや感覚のない足を必死に動かし自転車をこいでいる。 ここまでくると明日は筋肉痛どころか疲労骨折している可能性だってある。
しかし俺はこぎ続けなければならない。
「ここを曲がって……」
俺はうろ覚えで夜道を進んでいく。 通り過ぎた公園の時計はもう十一時になっていた。
この公園があるってことはもうすぐなはずだ。
「おーい! 未来! いるかー?」
近所迷惑とわかっているがしょうがない。 それにこの場所は入ってしまえば普通の人じゃ見つけることすら難しいからな。
この場所とは幼稚園時代に未来と杏樹とで見つけた秘密の場所で空き地にある竹林の中の空洞状の場所だ。
「返事はなしか……」
入ってみるか。
すっかり隠し通路は草で覆われていて見つけるのに苦労したが、最近踏まれたような跡があり俺は足を速めた。 そして俺たちの秘密基地には一つの影が浮かんでいた。
「やっと見つけたぞ。 この大馬鹿野郎め」
「う、そ…… つっくん…… なんで……?」
未来は薄汚れた顔で驚いている。
「ばーか。 探すなって言われて家族を探しに行かないクソがどこにいる?」
「つ、つっくん…… グスッ……」
泣くほどなんだったら家でなんてしなければよかったのにな。
まあ、未来なりに何か事情があるんだろう。 それにしてもやばいな……
未来を見つけて緊張が解けたのか体と意識が鉛のように重くなってくる。
「とりあえずよかった、未来……」
「、っくん!? つっく、!?」
俺の意識はそこで途絶えた。
「んん……」
あれ……? ここはどこだ……?
俺は真っ白な部屋で見知らぬベットに横たわっている。 足にはギプスが巻いてあり吊ってある。
「あ、つっくん! 起きたの!?」
「ん? ああ、未来か。 ここはどこなんだ?」
「病院だよ! つっくはあの後倒れて救急車で運ばれたんだよ?」
え、そうなのか!? 俺ってそんな危ない状況だったの!?
「まあ、足は疲労骨折みたいなんだけどただの疲労で爆睡してたから救急隊員の人が笑ってたよ」
「え…… すごい恥ずかしいじゃん……」
「足の方は結構ひどいみたいだから三週間は入院だってさー」
三週間か…… 勉強に追いつけるかな……
「あ、そうだ。 別に怒ってるわけじゃないんだが、なんで未来は家でなんてしたんだ?」
「げ、やっぱそうなるよね……」
「まあ、理由くらい聞かないと煮え切らないしな」
「実はね、もしかして私はやっぱり邪魔なんじゃないのかなって思ってさ。 最近つっくんが絡んでくれないし、家でも学校でも私にイライラしてたみたいだったから……」
そんなことを思っていたのか…… 確かに最近は未来に対して冷たかったかもしれない。 些細なミスでもいらだっていたのは事実だし……
「だから……」
「「ごめんなさい!」」
「「え?」」
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