第2話 手伝ってくれる?強い人の話

 忘れ難い人がいる。

 まったり系ギルドに属する事になった私を狩りに誘ってきた、私の後から同じギルドに加入した人だった。


「頑張り屋さんだね」

 と、その人は言った。

 私がヒーラーの上位職に転職した直後だったか。盗賊の上位職だったその人は、狩の後に長い雑談を振ってき、そして。

「実はこのキャラ、サブなんだよね。メイン持ってくる」


 そう言ってログアウトし、数分の後に姿を現したのは、騎士の最上級であった。

「私はね、ヒーラーにも詳しいよ。ヒーラー最上級職、レベルカンストも持ってるから」


 凄い廃人に気に入られたのだな、色々教えてもらえればいいな。

 と、私は期待に胸を膨らませたものだ。



 結果から言うと、彼は初心者狩りであった。色々な意味で。


 初心者に教えたい! 先輩風吹かせたい! 凄いって言われたい! 偉そうな態度取りたい!

 あと、女キャラのヒーラーとイチャイチャしたい! 初心者だから言いくるめるのなんてらくちん! ネトゲはそんなものだよ、って言えばおk!


 みたいな感じだったのだろう。多分。知らんけど。


 当時は、

「くそがwww」

 と思ったものだが、後々まで役に立つプレイ上の技術を教えてくれたのも彼である。ありがとう。

 無垢で、人の話を素直に聞ける初心者時代に、基本技術を徹底的に仕込まれたのは極めて幸運だったと言える。


 今思うと、承認欲求が強い人だった。学んだ技術は10年以上も私を支えてくれたのだし、もっと優しくして、ヨイショしまくってあげればよかったね!

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ネトゲの思い出 田原木 @taharaki

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