夏
バスロマン
夏
「 ──────── 」
あの日、君が最後に言った言葉は僕を通り越し、夜風と共に消えた。
そして次の日、君は僕の前からいなくなってしまった。
*
─僕は夏が嫌いだ
もし僕が今、周りに同級生もなく一人で校舎裏にある駐輪場へと歩いていたとしたら、すぐにでも立ち止まり、空へ向かって高らかに宣言していただろう。
そのくらい夏は嫌いだ。
うだるような暑さやうるさいセミの鳴き声、理由は多々あるが、一番の理由はもっと僕の深いとこに住みついている。
そんな事を考えてるうちに駐輪場についた僕は、自転車に跨がると、同級生達に別れをつげ、学校から海へと繋がる坂道へと漕ぎ出す。
海からの潮風を浴びながら、軽快に坂を下って行く。途中で飛び出してきた猫と衝突しそうになったが、最近の自転車は自動衝突回避機能の搭載が当たり前となっているので、なんなくかわしてくれた。
海岸沿いを道なりに進んでいくと、二本の分かれ道が見えてくる。
真っ直ぐ進むと、長い坂道を登った先にこの町で一番大きな家が現れる。今は誰も住んではいないが、海を一望できるその景色は絶景であるとよく聞かされたのを思い出す。
しかし、僕には到底縁のない場所なので、いつものように僕は右に曲がった。
夏 バスロマン @Basuroman
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