第60話

 トオヤは目を覚ましていた。




 そして、柔らかく微笑みながら、瑠衣だけを見つめている。






 瑠衣は、あきれて笑ってしまった。








「もう。…また、寝たふり?」







 彼は首を横に振った。









「今のキスで、目が覚めた」











 彼は、再びゆっくりと目を閉じる。











「もう一度、して」
















「…」















「お願い」

















 赤くなりながら、覚悟を決めて、



















 再びそっと近づいて、唇が触れるその瞬間。















 彼は瑠衣をぎゅっと引き寄せ、

 






















 いきなり奪う様に、そのキスを深くした。























 瑠衣をきつく抱き締めたまま彼は





















「理衣には、電話してあるから」










 と、短く説明し、









 また、何度も唇に、キスを落としていく。















 数えきれないキスの合間、
















「…今、何時かな、…ここは、どこなのかな」

















 瑠衣が聞くと、彼はむっとした表情を見せ、

















「俺以外の事、考えるの禁止」





















 と、耳元で囁く様に、命令した。


















「…はい」


















 瑠衣は、素直に従った。



















 彼は、浅く揺れる吐息と共に、


























「もう、止められないかも…」


















 と囁きながら、















 耳に、









 髪に、










 頬に、










 首筋に、



















 何度もキスを、落としていった。



























「続きは、もう少し…大人になってから、…でしょ?」






















 瑠衣が耐えられなくなり、真っ赤になってこう聞くと、




























「この間より少し、大人になったから」




























 トオヤは悪戯っぽく微笑んで、耳元で囁いた。























「もう少しだけ、進んでもいい?」























 ………!!!















 これが夢なら、




















 飛び起きてまた、自分のベッドに頭をぶつけて、





















 理衣に怒られそうだけど。























 どうやら、これは夢じゃないらしい、から。

























「あと、…ちょっとだけなら」

















 瑠衣は、彼の首に自分から腕を回して、

























「愛してる。トオヤ」




























 彼の唇に、触れる様なキスをした。






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