敗北を知ったあの日

その後、俺は負けた。だが過去の功績が評価されプロ入りを果たした。シーズン終盤の今は、1軍ローテーションの中でタイトルの獲得を狙っている。


あのとき最後に投げた球はバックスクリーン直撃の逆転サヨナラホームランとなった。つくづく『主人公』とは恐ろしい。しかし、俺はあそこで野球をする意味、野球をする楽しみを思い出した。負けに終わった、涙も流した。でもそこから得られたものも多くて、それは俺の思考回路が変わったからだ。悔しいが悪魔のおかげだろう。おそらくあのまま挫折していたら、清々しく野球に向き合えなかった。


まあこれすらも運命だったのかもしれないが。


あれ以来悪魔と会うことはなかった。神様が『主人公』を愛するのであれば、あいつはきっと『主人公でないもの』を愛するのだろう。悪魔のおかげで今の自分がいるのも確かだった。まあ二度と会いたくはないが。


しかし、その期待は裏切られる。試合を終え、自宅に帰るとそこには自称悪魔がいた。


「お前は『天才』だから、タイトルなんて取れないのさ~!」


そいつはまるで変わらない見た目をしていた。俺は思わず笑ってしまった。

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夏、敗北を知る どぉぉん @do__

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