第三局 初手天元②
大学三年目の夏、僕は最後の大会に臨む。
ハンデ戦にはもう出ない。
僕の実力は大きく見積もっても初段あるかないか。
怪物が蠢く全国大会、中四国地方予選へ出場する。
この大会は5戦して5勝、または4勝した者が全国へ行ける。
自分が全国に行けるなんてこれっぽっちも思わない。
自分より遥かに強い相手から勝利をもぎ取るために僕は打つ。
自分が美しいと信じる一手を。
一人目は三段、僕は三連星。30目の負け。
二人目は五段、僕は星三角。中押し負け。
三人目は六段、僕は南十字星。勝負にならない。
四人目は四段、僕は三連星天元型。中押し負け。
格上に対してお気に入りのマイナー戦法で挑んだが、
僕のささやかな研究成果はことごとく蹂躙された。
でも、まだあと1回戦うことができる。
五人目は、五段。
この時点で2勝2敗。本選には出られない。
彼にとっては消化試合だろうか。
僕にとっては大一番だ。
最後の公式戦。僕は黒を持つことができた。
打つ場所は決まっている。
もし相手が全国1位でも変わらない。
一礼の後、
僕はゆっくり息を吐いて、
盤の真中へ石を放った。
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