第55話 突然の別れ【アイ・小池】
年が明けてしばらくして、小島は「好きな人が出来たから別れて下さい。」とアイから急に言われた。
アイが言う好きな人とは、同じバンドでギターを担当している小池だった。
前から感じていた小島の嫌な予感は的中した。
小池から1ヶ月前くらいに告白されて、何度か断ったけれど意識するようになり、好きと言う気持ちが止められなくなったとアイは言う。
小島はアイの事が大好きだったし、別れたくはなかった。
けれど小島の口から出た言葉は「わかった。大事にしてもらいなね。」だった。
小島は、今まで味わったことのない感情に次々に襲われた。
悔しかったし、悲しかったし、ムカついたし、痛かった。
小島は、どうにかしないと壊れそうだった。
誰でもいいから側にいてほしかった。
隣のクラスのユカという同級生が小島に好意があると聞いたことがあったので、小島はユカに電話をした。
電話で適当な事を言って告白して、すぐ付き合う事になった。
けれど小島の頭の中はアイの事しか考えていなかった。
なのにアイと別れてからの3日後にはユカとキスをした。
アイと別れて5日後にアイから「貸してもらってた物どうしたらいい?」と電話があった。
小島は、その電話で彼女が出来た事を伝えた。
アイは「いいのそれで?本当に好きなわけじゃないでしょ?私が言える立場じゃないけど…誰かの代わりなんて出来ないよ。彼女になった人がかわいそうだよ!」と言った。
図星過ぎてテンパった小島は「ちゃんと好きだよ!お前より優しいし。キスも上手いしよ!」と言ってしまう。
アイは、呆れたようなため息の後「キスしたんだ。よかったね。」と言った。
その言い方にイラッときた小島は「お前はどうなんだよ!小池とキスくらいはもうしてんだろ!」とキレ気味に言った。
するとアイは冷静に「キスどころかセックスもしたよ。」と答えた。
小島は何も言わず電話を切った。
その数秒後、小島は家の電話を叩き壊していた。
その音にビックリした小島の両親が出てきて、めちゃくちゃ怒っていたけれど小島は無視して家を出た。
アイとの交際中に何度もチャレンジしたのに痛がって出来なかったセックス。
小島はアイの初めての男になりたかった。
アイも初めては小島がいいと言っていた。
アイと別れて、ただでさえ壊れそうだったのに、小池と付き合って5日後にもうセックスしたことを知った小島は、敗北感やら悔しさやら怒りやら色々な感情が込み上げてきて…とうとう壊れてしまった。
そしてこの件が引き金となって、小島は暴れ天狗へと覚醒する。
第一章 完
ちちぶ天狗 774 @vakato
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