おかえりなさい

「ねえ、司……気分はどうですか?」

「寝覚めにしては、最悪な方だな。前の時のがいくらかましだった。……そう、アレだ。泡盛を一瓶一気飲みした翌朝の気分」


「また、変な例えを……。でも、すぐに収まるはずですよ」

「そんなもんか」


「ね? ……私の言ったとおりだったでしょ?」

「うん?」


「あの日から、更に時間は掛かりましたけど……でも、私は死を克服しましたよ」

「少し、予想とは違った形だがな」


「誤差です。誤差」

「そうか」


「……どうですか? 新しい世界は」

「――ああ、悪くないな」


「ここから、始まるんですよ。私の恋の物語は」

「悪いな、待たせたみたいで」


「もういいです。もう離しませんから」

「そうか」


「でも……」

「どうした?」


「あの日、結局、言ってくれなかった言葉は、ちゃんと言って下さい……今すぐに!」



「愛してるよ、慶子。これからはずっと一緒だ」



「……はい!」




 ――そうして彼女は、叶えられない願いを叶えた最初のひとりになった。――

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最後の眠りが覚める時 一条 灯夜 @touya-itijyou

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