8
数日は何も起きなかった。
日曜日の夜、アリサが
「ちはるぅ~」
チハルは私を机の引き出しに
引き出しの中にいたせいで、声が聞き取りづらい。
「それで……だから、あの、私、チハルが言ってた意味、わかって……」
アリサの声は
「あのね、アリサ。本当はマシェラ、まだここにあるんだ」
「え?」
「アリサが自分の手で捨てないと、意味がないと思って」
チハルは引き出しを開けて私を出した。アリサの
「明日の朝、
「でも、チハル……」
「
アリサは
「私だってさ、友だちをなくしたいわけじゃないんだもん。マシェラを持ってたら、アリサが変わっちゃうんじゃないかって思って、不安だっただけ」
「うん……わかった」
アリサはようやくうなずいた。
「でも、なんかぬいぐるみをゴミにするのって、かわいそうだね」
「マシェラは
チハルが私に話しかけてくる。
「大丈夫。つくった本人が
私はそう伝える。たぶん、2人にとっては、このほうがいいんだ。
月曜日の朝、2人は家の外で会って、一緒にゴミの
「アリサが捨てるんだよ」
アリサはうなずいて、
「ごめんね、マシェラ」
2人が行ってしまうと、パーシルが現れた。パーシルは少し、情けない顔をしていた。
「ああ、マシェラ。
パーシルは例の
「どうもうまくいかなかったようだね」
「そうみたい。でも、パーシルは私が
「もちろん。私は幸せだといつも言っている人のほうが、幸せになれるからね」
パーシルは私を手にしたまま、歩き出す。私は少し周りを見回してみた。学校へ行く子どもたちの
「そう……それがパーシルの
パーシルはうなずいた。
「まあ、でもうまくいかなかったのは事実なんだから、
チハルがランドセルを
「あの2人、また仲直りしたみたいで、よかった」
私がそう言うと、パーシルは少し切なそうな笑みを見せた。
「どうやら僕はおせっかいだったみたいだね。あの2人に、マシェラみたいな魔法は
「うん。でも、もしかしたら……」
私は出てきたアリサを見つめた。アリサはチハルの手を引いて、学校のほうへ歩いて行く。その表情に
ぬいぐるみのマシェラ 桜川 ゆうか @sakuragawa
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