7
木曜日の朝、チハルは
チハルが出かけてしばらくすると、パーシルが、2つあるうち道路に面した
「さてさて、どんな調子かな?」
「あまりうまくいってないわ、パーシル。あなたは私がここにいるって、わかるのね」
「どこにいても、ちゃんとわかるよ。ああ、だけどね、マシェラ。勝手に持ち去るわけにはいかないんだからね」
「わかってる。あの2人、仲直りしてくれるといいんだけど」
パーシルはほほ笑んだ。
「うまくいかなかったとしても、
「
パーシルは軽くため息をついた。この話はしたくないのかもしれない。
「いや、知ってはいたけどね。
「そうなんじゃないかと思った」
パーシルはうなずいて、そのまま
チハルは帰ってきても、ただいまとしか言わなかった。すぐに机の上に宿題を広げてやり始める。
「
「ちはるぅ……」
アリサの声だった。
「アリサ、とりあえず、上がって」
チハルは背中をアリサに向けないようにしながら話しかけている。2人は部屋に入って、ソファに
「ねえ、チハル以外にマシェラを知ってる人、いないんだってば。どこにやったの?」
「もう捨てちゃったよ」
「え? ひどい!」
アリサはさっと立ち上がった。チハルは私を隠しているので、座ったままだ。
「少し落ち着いて。ちゃんと話そうよ」
「どうせ、マシェラがないと、算数もできないバカだよ!」
「そういう話じゃないってば。算数はわかるって信じてやらなきゃ、できるようにならないよ」
「だけど、チハル。私のマシェラだったのに」
「うん、わかってるよ」
「わかってない! わかってたら、勝手に捨てたりしないもんっ!」
「それがアリサのためになるなら、私だって勝手に捨てないよ」
「何が私のためなわけ? いったいどういうつもり? もう、チハルなんて知らない!
アリサがドアのほうへ動いた。私の位置からアリサの手の先が見えた。
「アリサ! アリサはマシェラで何がしたいの? 幸せになるってどういうこと? 算数ができればいいの? 友だちをなくして、それでも楽しいの?」
アリサはその場で立ち止まる。だけど、何も答えなかった。
「わかった、アリサ。今は
アリサはドアを開け放って、そのまま出て行ってしまう。
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