6
間もなく
ベルは何回も
それから少し間が空いて、だれかが家に帰ってくる。その人物は、チハルの部屋のドアを開けたようだった。バタンという音がして、そしてすぐに閉まる。どこかで水の流れる音がして、そのうち料理をする音になっていく。
チハルが帰ってきたのは、だいぶ
チハルの部屋が見える。ベッドはピンクで
「アリサがあんたにこだわらなければいいのに。私、どうすればいいんだろう。ねえ、もし生きてるなら、教えてよ。あなたを手放したい場合、どう
チハルは私に問いかけてくる。
「
気づいたときには、私はそう伝えていた。自分の声を初めて聞いた。アリサやチハルと比べて、私の声は少し高いみたいだった。
「……マシェラが、しゃべった……」
チハルは目を丸くして、じっと私を見つめていた。私が話せるとは思っていなかったみたい。
「こんにちは。あなた、おしゃべりできるのね。アリサは知ってたの?」
言ったとおりになると理解した以上、知らなかったとも言えない。
「話したことはないわね」
「じゃあ、火が出たときはあせったんじゃない?」
「それはそうよ」
チハルはうなずいた。
「なんだかぬいぐるみが生きてるって不思議だけど、やっぱりマシェラは生きてるんだね。自分で移動もできるの?」
だれか持ち主がそう言えば、できるのかもしれない。考えたこともなかった。
「あなたがそう
「それじゃ、私が
「ううん、それは違うわ。持ち主が言うとおりにするようにできてるから、持ち主がアリサなら、アリサの指示に
「ん? それって、今は私が持ち主ってこと?」
私が会話をできるようになったのは、チハルがそう言ったからだ。
「そうよ。あなたの手元にある以上、そうなるわ」
チハルはちょっと
「なんだか、あなたをゴミにするのがかわいそうになってきちゃった……」
私は何も言えなかった。うまく使えば、私は役に立つ。ただ、使い方を間違うと、害にもなる。
チハルは私を
チハルは
私が気になっていても、チハルは私に話しかけず、ベッドにうつ
玄関のベルが鳴る。チハルは動かなかった。家族が帰ってきているわけでもなさそうだ。ベルは繰り返し鳴ったが、チハルは一向に応じようとはしなかった。
玄関のベルのしつこさを思えば、アリサが来ているとしか思えなかった。チハルが私を持っていると信じているアリサが、ひたすら玄関のベルを鳴らしていて、チハルはその
不意にチハルは立ち上がった。そして、私を手に取ると、一言だけ言い放った。
「アリサはもう、追いかけてこない」
玄関のベルが鳴り止んだ。
とりあえずアリサの
「うーん……私、間違ったかも」
チハルは私から視線を
「さっきはアリサが来ないって言ったけど、明日になったら、また来るかもしれない」
チハルはそう言って、私とランドセルを
「アリサのだから、私が持ってちゃダメなんだよね。だけど、今のアリサに返したら、また……」
チハルは私を見て
チハルは私を
30分くらいの間、チハルは何度か紙を
「できた!」
満足そうにうなずくと、そのままお風呂に入る用意を始めてしまう。私をランドセルにつけないんだろうか。アリサの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます