〔短編〕お嬢様はレアが好き!天使と悪魔のスーパークォーター!

睡蓮こたつ

 

 辺境の地、ヴィラーダ地方。

 私、レナシス・クリード・スティフェルは、この地に生を受けた。

 昔は立派な貴族だったらしいのだけど、今は所謂いわゆる没落貴族。

 でも、お婆ちゃんと一緒に楽しく暮らしてる。

 貧しいけれど幸せな家庭……このまま続けば良いと思っていた。


 いつも笑顔のお婆ちゃん。

 畑仕事をしている時も笑顔を絶やさない。

 私は畑仕事を偶に手伝うくらいで、基本は家事全般だ。

 私が16歳になった年のある日。


「た、だいま……うぅ……」

「お婆ちゃん、どうしたの!」

「ちょっと……苦しくてね……」


 私はお婆ちゃん肩を抱え、ベッドまで運んで寝かせる。


「お婆ちゃん! お医者さんを呼んでくるから待っててね!」


 私は急いで村のお医者さんの所へ向い、連れて帰ってきた。


「お婆ちゃん、大丈夫! お医者さんを連れて来たよ!」

「はーい、スティフェル様、大丈夫ですかー?」

 

 大丈夫じゃないから、連れてきたんでしょ!

 心配と苛立ちで複雑な状態だったけど、水とタオルを準備して運んでみた。

 すると、お婆ちゃんは落ち着いたのか眠りについていた。


「お嬢様、ちょっと……」

「はい……」


 腐っても貴族、様は付けてくれる。


「お婆様のご容態ですが……」

「はい……」


 私は息を呑んで、お医者さんの言葉を待つ。


「鑑定魔法の結果ですが、流行り病では有りません」

「では……?」

「内蔵を弱めていますね。年齢から来る物も有るのでしょう」

「お婆ちゃんは治るんですか!?」

「治す方法は有りますが……お金が結構掛かります」

「え……」

「回復魔法では無理ですので、お薬の病魔用のポーション費と行使費です。これを数ヶ月は行わないといけません。お代は――――」


 はぁ!? そんなに掛かるの!?


「うちにはそんな大金……」

「申し訳ない、行使費はうちで負担するとしても、うちでポーションを持ってる訳では無いので買わないと……」


 なんて事なの……。


「出来るだけ助力は致しますが……」

「分かりました……何か方法を考えます。ありがとうございました」

「では、お大事に……」


 そんな……お婆ちゃんが……。

 お金を稼がなきゃ! でも、どうやって。

 先ず、屋敷内の目ぼしい物を探す……が無い。

 ん? 何だろう、このスクロール?

 結構、大きい……何にも書いて無い。


 スクロールを開き終わると、紙の表面が輝きだした。


 ま、眩しい……何か文字が……これ、家系図?

 あ、私まで載ってる!

 お父さんの名前とお婆ちゃんの名前だ。

 お爺ちゃんが……悪魔第一階級レビヤタン?

 えっ、悪魔って何?

 お母さん側は、お爺ちゃんと……お婆ちゃんが第六位天使エクスシア?

 何なの? 明日、お婆ちゃんに聞いてみよ。


 結局、金目の物は見付からなかった。

 代わりに「魔導書」の上下巻、「初めての回復魔法」「魔物大全集」と言う興味深い本を見付けた。

 

 翌朝、お婆ちゃんの様子を見に行く。


「お婆ちゃん、大丈夫?」

「心配を掛けてごめんね……」

「お婆ちゃん、教えて欲しい事が有るんだけど……」


 私は昨日の家系図について教えて貰った。


 お婆ちゃんの旦那さんである父方の祖父は、悪魔だったらしい。

 父を身籠ると失踪。お婆ちゃん一人で私の父育てた。

 その父も私を身籠ると失踪したらしく、血は争えないと呆れていた。


 一方、母方の祖母は天使だったらしい。

 天使と人間の間で母を身籠った罪で、祖父祖母共に神様の罰を受けて消されてしまった。

 母には罪が無いとの事で、罰を受けず出生したが病弱であった。

 その為、私を産んで直ぐに他界してしまったそうだ。

 天使とのハーフでも、病魔には勝てなかったんだ。


「つまり……私には、天使と悪魔の血が流れているって事?」

「隠すつもりじゃ無かったんだけど……」

「気にしなくて大丈夫だよ、お婆ちゃん」

「ごめんねぇ……げほっ、げほっ……」


 私はお婆ちゃんを寝かせ、食事の準備をしながら考えていた。

 天使と悪魔の血が流れているなら、魔法とか使えるんじゃない?

 魔法とか使えれば、ダンジョンに行けるよね……。

 強くなったらダンジョンでレアアイテムを拾って売れば……お薬とか何とかなるかも!

 幸いにも、米や野菜、干し肉の備蓄は有る。

 私達二人なら、数ヶ月は耐えれる筈。

 明日から魔法の特訓だ!


 それから「魔導書」の上下巻、「初めての回復魔法」「魔物大全集」を何度も読み返し、魔法は何度も練習した。


 そして、一ヶ月が過ぎた――


「お婆ちゃん、おはよ! 調子は?」

「お、お早うレナシス……お婆ちゃんは、もう……楽になりたいよ……」

「そんな事言わないで! 絶対、薬を買って帰るから! ……ううっ……」


 私は泣きながら、お婆ちゃんを抱き締めた。


 その日、初めてダンジョンへ向かった。

 通常、ダンジョンに入る為には、冒険者登録をして腕に魔刻と呼ばれる物を付けるらしい。

 これをゲートの守衛に見せる事で、晴れてダンジョンへ入場出来る。

 が、それをするだけで、お金が掛かる!

 

 と言う訳で、魔法で身体を透明化して入場する。


「インビジビリティ!」


 レナシスは周りから見えなくなり、守衛の間を易々と通り過ぎる。


「ん? 何か良い匂いがしないか?」

「本当だ、何だろうな?」


 えっ、私って良い匂いがするの?

 ちょっぴり嬉しいかも。


 このダンジョンは根源の洞窟と言われ、現在の冒険者達の最下層到達階は地下30階だそうだ。


「アクセラレーション! フライ! マッピング!」


 加速魔法と飛翔魔法、そして、地図記憶魔法だ。

 これで私は一気に深部まで進める筈だ。

 出てくる魔物や冒険者は完全に無視。

 魔法が切れたら再び魔法。

 途中、縦穴が有ったので一気に階層を稼ぐ。


 そして、遂に地下30階到達。

 この辺で魔物を倒せるか実験しよ。

 だけど、全然魔物に遭遇する事なく大分奥まで進む事に。


「「「がるるる……」」」


 やっといたわ! 三首の犬……ケルベロスだ。

 こいつを倒さないと下の階に行けないのね。

 さぁ、いくよ!

 私はケルベロスに向かい指を差して唱える。


「ライトニングボルト!」


 凄まじい雷撃がケルベロスを襲い、周囲の壁の一部と一緒に消滅してしまった。

 あれ? 弱い?

 ケルベロスが居た所には、金色に光る腕輪が落ちていた。

 こ、これは! 高値で売れそう!

 この調子でどんどん行くよ!

 待っててね、お婆ちゃん!


 更に階層重ね、地下50階……。

 もう荷物が持てないよ。

 お金に余裕が出来たら魔法の鞄を買おう。


「誰だ貴様! 何故、人間がこんな場所に?」


 あ、あれは確かレッサーデーモン!


「妙だな。女、お前人間か?」

「人間ですけど何か?」

「まぁ良い、死ね!」


 黙って殺される訳無いでしょ!


「ファイアボール!」


 私は火の球を20個放った。念のためね。


「ば、馬鹿な! こんな数! うがぁぁぁ!」


 あっと言う間に消滅。

 火の球、半分でも余裕だったかな。

 あれ? あれは!

 レッサーデーモンの居た所に、金色と銀色に光る剣が!

 レアアイテムかな!? お宝お宝!

 今日はもう帰るか。


「テレポート!」


 便利な魔法でしょ! 空間転移魔法。

 ところが欠点が有るんだよね。

 ダンジョン内外は移動出来ない……これは結界のせい。

 あと行った場所しか行けない……これは仕方が無いよね。

 そして一日一回しか使えない……これも仕方が無い。

 地下1階だと目立つから地下3階に移動してから帰る。


 いやー初日にしては大漁大漁!

 私の考えは間違って無かったわ。

 あ、ここで鑑定してからダンジョンを出ましょ。


「アプレイザー!」

 

 ふむふむ、腕輪はマジックアイテムで、この王冠はノーマルかぁ……あ、この剣レアアイテムだ! 2つも有る! この短剣はマジックかぁ……丁度武器が無いから装備しよっと。

 結構、時間掛かっちゃった。

 さて帰りますか……ん? 男の子?


「助けてー!」


 ゴブリンが5匹……追いかけられてる?

 男の子は遂に壁まで、追い詰められた。

 あの男の子……超可愛い!!

 人を助けるのに理由は要らないよね?

 嘘、だって可愛いんだもん。


「マジックミサイル!」


 30本の矢が5匹のゴブリンを串刺しにした。


「大丈夫?」

「ど、どうもありがと……」

「何で一人でこんなところに?」


 聞けばパーティーとはぐれたらしい。

 年は13歳で三つ下だね。


「君、お名前は?」

「ライウェルです」

「ライ君ね、私はレナシス。レナって呼んでね」


 いきなり愛称とか引かれるかな?


「うん。レナさん」


 ちょっ……可愛い過ぎる!


「レナさん……」

「なーに、ライ君?」

「あの魔法……マジックミサイルにしては、数が多過ぎると思うんだけど……普通は多くて2、3本だと……」


 え! そうなの? だって魔導書には努力次第で本数が増えるって書いてたから。


「そ、そうなんだー……あははっ」

「レナさん!」

「なーにかな?」

「僕、嘘ついた」

「え? どうしたの?」

「本当は、はぐれたんじゃ無いんだ」


 ん? どう言う事?


「僕、レベルも低いし捨てられたんだ。元々虐められてて……今回も無理矢理連れて行かれて」

「ライ君! それじゃ明日から私と潜らない? パーティーなら経験値が分配されるし」

「え、良いんですか!?」

「勿論!」

「お、お願いします!」


 愛でて、愛でて、愛でまくるよ!

 地下1階まで送ってお別れ。

 私は時間をずらしてダンジョンを後にした。


 街で換金するとアイテムは大金に化けた。

 そのお金でお医者さんに聞いたポーションと、お婆ちゃんが大好きなお菓子を買う。

 急いでお医者さんを連れて家に戻った。


「ただいま、お婆ちゃん!」

「お、お帰り……レナシス……」

「ポーション買ってきたよ!」

「そ……う……かい……ありが……と……ね」


 お医者さんは、直ぐにポーションと魔法を使用する。


「こ、これは……」

「どうしたんですか!?」

「スティフェル様には、もうポーションが効きません……」

「え、どうして……治るって!」

「時間が……身体を蝕んだかと……」

「そんな……お婆ちゃーん! わぁぁぁ!」

「泣か……ないで……レナシス、私は……幸せだっ…………」

「えっ! お婆ちゃん! お婆ちゃん!」


 呆気なかった。お婆ちゃんは最後まで笑っていた。本当、何の悔いも無かった様に……。


 私は一週間ほど、何もしなかった。

 お婆ちゃんを埋葬して、敷地内のお墓をずっと眺めていた。

 私、何をしてるんだろう……。


「お婆ちゃん……」


 お婆ちゃんの遺品を整理する事にした。

 あれ? 手紙?


(親愛なるレナシスへ)


 お婆ちゃん……。


(この手紙を読んでいると言う事は、私の状態がとても酷いか、もしかしたら死んでいるかも知れないね。レナシスと暮らした16年間、とっても幸せだったよ。いつもお婆ちゃんと一緒に居てくれたのは本当に嬉しかった。でもね、代わりに外に出歩く事が少なかったでしょ? 私はそれが凄く心配だったんだよ。友達は居るのかい? レナシスも年頃なんだから、男の子の一人でも連れて来て欲しかったね。ま、私の我が儘だけどね。心残りはレナシスの花嫁姿が見れない事。お婆ちゃんが死んでも、家で塞ぎ込まないで、外の世界に目を向けるんだよ。じゃあ元気でね。お婆ちゃんより)


 お、お婆ちゃん……うっうっ……。


 次の日、私はダンジョンに行く事にした。

 そう言えば、ライ君との約束も破っちゃったな。

 街で魔法の鞄を購入してダンジョンの中へと向かう。

 

 あれは……。


「ライ君!」

「レナさん!? ずっと待ってたよ!」

「え? ずっと待っててくれたの?」

「毎日ここで待ってたよ。今日会えなかったら諦めようかと……」


 泣きそう顔を見て思わず抱きしめる。


「ごめんね、お婆ちゃんが亡くなっちゃって」

「そうだったんだ、僕の方こそ……ごめんね」


 可愛い! 持ち帰りたいわ……。


「さ、レベルを上げに行きましょ!」

「うん!」

「じゃ、私に抱きついて!」

「え?」


 不思議そうに私を見る。


「落ちないように、しっかり抱きついてね!」

「う、うん!」


 魔法を使って一気に深部を目指す。


「え!? えぇー!?」


 涙目のライ君……そんな顔も可愛いなぁ。

 あっと言う間に30階。


「す、凄い……」

「多分、大事になりそうだから、私の事は内緒にしてね?」

「勿論だよ!」

「二人だけの、ひ、み、つ、ね?」

「うん!」


 二人だけの秘密……良い響きだわ。


「あ、あとコレを付けないと」


 私は腕輪を渡す。

 これはパーティーの腕輪、経験値を分配する事の出来る便利なマジックアイテム。


「さぁ行くよ!」

「はい!」


 さ、ケルベロス、レアアイテム落としてね!


「ライトニングボルト!」


 またしても一撃で倒す。


「レナさん……凄い」

「えへへ!」


 アイテムは……盾?


「レナさん、僕は経験値を貰えれば良いから、アイテムは要らないよ?」


 出来た子だ! でもアイテム全部没収ってのも年上の威厳が。


「アプレイザー!」


 えっと、これは……マジックアイテムか。


「ライ君、これは君にあげる」

「え、でも?」

「私はレアアイテムは欲しいけど、マジックアイテムは要らないから大丈夫!」

「ありがとー! レナさん!」

「うんうん」


 可愛いから、頭撫で撫でしちゃう。


「この調子でどんどん行くよ!」

「うん!」


 結局、この日は地下40階まで到達。

 

「今日は帰ろうか?」

「そうですね……」


 あれ、元気が無いな?


「どうしたの?」

「実は……」


 ライ君の問題、それは魔刻の能力だった。

 ダンジョンに入る際、守衛に魔刻の確認を取られてしまう。

 魔刻から読み取れる事は、本人のレベルと冒険者ランク。

 この冒険者ランクが曲者で、5フロアをクリアする毎に1レベル上がる。

 ライ君と私は40階まで達成、39階までクリアした事になり冒険者ランクが8になる。

 現在の最下層到達が30階、つまり29階までクリアした状態なので冒険者ランクは6になる。

 ライ君は前人未到の階層に到達した事になる。


「それは……マズいわね」

「うん」

「今日は一緒に出ましょ!」

「え?」

「実は私、冒険者登録してないの」

「え!? じゃ、どうやって……?」


 私は透明化の魔法の事を説明した。

 ライ君は目を見開いて驚いていた。


「じゃ、レナさんはレベルも無いの?」

「そうなるねー。でも、入るの面倒だし登録しようかな?」

「その方が良いよ!」


 ライ君のランクの説明もつくし、冒険者登録しても良いかな。


「じゃ、明日登録しに行くよ」

「うん! 僕も一緒に行くよ!」


 あらあら、可愛いやつめ。


 翌日、登録所前で待ち合わせ……これってデートかな? なんて、浮かれていると来ましたよ! 私の王子様!


「お待たせしました!」

「ううん、全然待ってないよ!」


 ごめんなさい、一時間くらい待ってました。


「行きましょ!」


 中に入り受け付けを済ませる。

 さ、ここからが問題。


「では、レベルを測定しますね」


 そう言うと石板を渡されたんだけど……?


「石板を持ったまま、5分ほどお待ち下さい。レベルが0から100まで測定出来ますので」

「は、はぁ……」

「文字が出てくるまで待つんだよ」

「ありがと、ライ君!」

「え、いや別に……」


 ライ君、顔真っ赤! 可愛いなぁ。

 私、可愛いしか言ってないな……心の中でだけど。


「あ、文字が……」

「お疲れ様でした……えぇ!?」

「え、何か?」

「いや、あの……レベル100です……」


 あ、やっぱり? 私も強いと思ったんだ!


「レナさん……凄いよ!!」


 周りの人間もざわつき始める。


「レベル100だってよ!」

「あの姉ちゃんが? 何か間違いだろ!?」

「スティフェル家の令嬢らしいぞ!?」


 他に色々言われてたけど、面倒なのでその場を退散した。


「ライ君、御飯食べてから行こっか?」

「はい、でも僕、持ち合わせが無くって……」

「お姉さんが出してあげるっ!」

「でも、そんな……」

「気にしない気にしない!」

「では、お言葉に甘えます」

「素直で宜しい!」


 食事を取り終え、ダンジョンへしゅっぱーつ!


「今回はライ君が入る時だけ透明化だね」

「はい!」

「私は普通に入って、100レベルの人がダンジョンに入るのを守衛に覚えて貰わないと」


 そして「ダンジョン内で共闘して深層部に行きました」って事にすれば説明がつくよね。


「レ、レベル100!? 行ってらっしゃいませ!」

「はーい!」


 ダンジョンでライ君と合流し、一気に50階まで進行する。


「この辺から行くよ!」

「僕はアイテムを拾って行きますね!」


 私が魔物を蹴散らし、ライ君がアイテムを回収して行く。

 ライ君の発案。賢い子なんでしょう!


「そう言えば……ライ君レベル上がってた?」

「はい、1から10になってました! 一気に皆を抜いて大人と同等ですよ!」

「それは良かった!」

「ちょっとズルいですけどね」

「私はライ君だから一緒にやってるし、他の人とは一緒にやらないから気にしないでね」


 また顔真っ赤! 堪らないわ!


 さて、この階はレッサーデーモンだった筈。

 あれ? 3体も居る……。


「先手必勝、ファイアボール!」


 今回もあっさり……1匹残ってる!

 レッサーデーモンはライ君を狙っていた。

 マズい! 私はライ君の前に移動し、レッサーデーモンの一撃を喰らってしまった。


「かはっ……げほっ……」

「レナさん!」

「くっ……マジックミサイル!」


 50本の矢がレッサーデーモンを貫き、レッサーデーモンは絶叫と共に消滅した。


「はぁはぁ……げほっ……」


 あーあ、やっちゃったなぁ……血まみれだ。


「レナさん! 死なないで!」

「ラ……イ君、私の事……好き?」

「大好きだよ! だから死なないで」

「どれ……くら……い?」

「お嫁さんにしたいぐらいだよ! だから、だから!」

「お嫁……さんか……嬉し……いな……」


 そして、私は天に向かい手を掲げる。


「キュア……ライ……ト!」


 私の傷は見る見るうちに塞がっていく。


「レナさん……?」

「ふぅ……何とか生きてるわ……」

「レナさんの馬鹿!」


 ライ君は泣きじゃくって私を抱き締める。


「実践で回復魔法を使うの初めてだったから上手くいって良かった……」

「え、じゃあ本当に危なかったんだ……」


 それを聞くと、また泣き出してしまった。

 本当、可愛い子だわ。


「あ、ライ君! レアアイテムっぽい!」

「もう……レナさんってば……」

「私の生き甲斐は、ライ君とレアアイテムだもん!」

 

 私はライ君に軽くキスをした。

 ライ君は顔を赤らめてにっこりと笑う。


「もう、レナさんったら調子が良いなぁ」

「ふふふ……そう言えばライ君、私をお嫁さんにしてくれるんだよね?」

「え、あ、うん……」

「歯切れが悪いなぁ?」


 まだまだダンジョンは続く。

 愛を育みながらレアアイテムを集めるぞ!


 

 お婆ちゃん、まだ微妙だけど彼氏が出来るかも知れません!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

〔短編〕お嬢様はレアが好き!天使と悪魔のスーパークォーター! 睡蓮こたつ @sui-kota

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ