レトロゲーの世界に転生したけど同じ境遇の相棒が最強すぎる

香枝ゆき

プロローグ

 ああ、死んだ。死んだ。死ねた。

 やっとこの現実からおさらばだ。

 なのに、光が見える。

 どうして、なぜ、この暖かさを、現実では受けられなかったのだろう。

 暖かい、痛くない。


 ……戻りたい。生きたい。 


 だけど、元の世界には戻りたくない。



 か細い糸をつかんだ。

 ものすごい勢いで引っ張られた。


「よかった…………気がついた」

木々が風に揺れてさわさわと音を立てている。

背中にはふかふかの草。

視界に映るのは、ほっとした顔の美少女。


グアア!という獰猛な鳴き声が聞こえる。


「ちょっと黙って」

ステッキが高速で振るわれ、猛獣は吹っ飛ばされる。

地面に打ち付けられる間もなくその姿は木っ端みじんとなった。

それなりの露出がある服からは、むきむきの筋肉が見えるわけではない。

「これでターン数増やさずに終われるね」

にこっとした彼女に、自分の姿を顧みる。

古典的な魔法使いのような服装。

――ここはどこだ。


「とりあえず、イグニスボール出してよ」

「え、なにそのボール」

「……メイジふざけてる?」

「え?」

「……わかった、一瞬で終わらせる」


『――イグニスパエラ』


彼女のステッキから、特大の火球が四方八方へ炸裂する。

モンスターと思われるものたちは灰燼に帰した。


「……さて、本題に入ろっか」


笑顔が怖かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

レトロゲーの世界に転生したけど同じ境遇の相棒が最強すぎる 香枝ゆき @yukan-yuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ