第3話「これが仕事」\「話」

「ありがとうございます境界戦士様…何とお礼すれば良いことか…」


頭を下げるショッピングモールの店員。

その様子を見守る周囲。


「僕達はこれが仕事ですので、気にしないでください」


店員にそう答えるのは、先程戦っていたうちの赤髪の少年。

紺色の髪の少年は、興味無さそうに会話を聞いていた。


「御二方のお陰で、怪我人が出る事無く済みました」


「いえいえ、皆さんが無事で良かったです」


まだ礼を言い足りなさそうにする店員に、「僕達はこれで失礼しますね」と言葉を切り、二人の少年はショッピングモールを出た。









場所は変わり、とある小さな飲食店。

そこで二人の少年、政行と優希が食事を兼ねて話していた。


「初めて“ゆらぎ”も倒せたし、これからどこ行くんだよ、優希」


「うーん。そうは言っても、“ゆらぎ”がいつどこで誰がなるかなんて分からないって、先生も言ってたでしょ?だからその場にいた境界戦士が戦わなくちゃ…」


「それは先生から何回も聞いた話だから分かってる」


呆れ顔で優希の話を聞き流す政行。海のような色の髪を掻きながら、訓練校の教師の言葉を思い出していた。




─────“ゆらぎ”と“境界戦士”について。


数十年前、突如出現した現象であり怪物、ゆらぎ。

ゆらぎとは、人間のそれぞれ持っている善悪の境界線が崩壊し、理性を保つことが出来なくなる状態を指す。

ゆらぎとなった人間の特徴として、手の甲には謎の印が浮かび上がり、身体能力等が大幅に向上する…要するに化け物へと化すのだ。


そして、ゆらぎとなってしまえばその人間は暴れ始め、最終的には死に至る。


そんな恐ろしい状態を止める唯一の方法が、「精神の核を修復」する事である。


ゆらぎとなった人間の精神の核に他者が直接触れ、善悪の境界線を改めて引き直し、精神の核を修復する方法。


それは余りにも危険な方法で、修復している間に自分自身もゆらぎへとなる可能性がある。


そんな危険を考慮して、ゆらぎを直す為に出来た職業が、境界戦士と言う訳だ。






「……めちゃくちゃな話だよな。未だに信じらんねぇ」


そんな事を呑気に言いながら料理を口に運ぶ政行。

それと同時に、手袋をはめてある自分の手を見つめた。それに気づいた優希が、政行に言う。


「手の様子はどうかな?もう先生には戦って良いって言われた?」


「いや、全然…不安定要素が多いとか何とか…」


「そっか…でもそのうちに精神の核を治せるようになるよ。政行は優秀だもんね」


「お前に言われたかねぇよ学年首席」


ため息をつく政行に「そんなつもりは」と慌てる優希。二人は幼馴染な為、仲が良かった。だから訓練校でも共に過ごし、今でも一緒に居る。


「食べ終わったら、隣町に行こう。ゆらぎが出る前に」


「了解」


優希の言葉に政行は頷いて、また食べ始めた。

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境界戦士 @tomatochanhahimajin

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