第493話 後輩ちゃん目線です
「ふわー、お腹空いた。ラーメンでも食べよーっと。確か、辛いインスタントラーメンがあったような...」
給湯室に向かい、鍋をセットしてお湯に火をかける。
最近、先輩は忙しい忙しいと言って、全然私に構ってくれない。何か、準備してることがある、みたいなことは言ってたけど、それなら尚更私と一緒にやるべきでしょ! って思うけど、先輩が一人でやってるってことはまだ、私の力は必要ないってことなんだと思う。今日も今日とて出張だとさ。
一体何を準備してるんだろう?
新しいゲーム開発とかかな? でも、それなら私と一緒にしない理由がない。アイデアなんて人が多ければ多いほど湧いてくるし、先輩は絶対に私の意見を聞くはずだ。
ん-ま、悩んだところで仕方ないか、答えが分かる訳でも無いんだし。
私がこんなことを考えてしまうのもきっと暇だからだ。最近は、彼もあまりログインしていないし、ゲームの売れ行きもまずまずで可もなく不可もなくだ。
だから、勤務時間中だというのにダラダラしてしまう。
お、お湯が沸いた。
私はかやくと麺と粉末スープを入れる。本当は粉末は後入れタイプだけど面倒だから一緒に入れちゃう。
4分タイマーをセットして、給湯室の壁にもたれかかる。あれ、スープ入れたけど、辛そうじゃないな。全然赤くない。
ふぅー次の新作はどうしようかなー。
先ほど、ゲームの売れ行きはまずまずとは言ったものの、それは発売してからもうすぐ4年が経とうとしている割には、という意味である。決して、現在発売しているビッグゲームタイトルたちと対等に渡り合えている訳ではない。売上金額でみても全盛期に比べればかなり落ち込んでしまっている。
先輩が忙しい忙しいと言っているのも頑張ってスポンサーを引っ張ってこようとしているからかもしれない。
タイマーを見る。残り時間は1分10秒。もういいや上げちゃおう。ラーメンなんて固麺の方が美味しいでしょ。
ゲーム開発は正直とっても難しい。
アイデアなんてもうとっくの昔に飽和しちゃってるし、どうやって差別化して商品を購入してもらうか、に掛かっている、と思う。
まあ、そんなこと言ってても革新的な発想でぶっちぎっちゃうタイトルとかあるけど、それでも以前よりは総じて売れにくくなっているという印象だ。
それでも私の役目はただ一つどうにかして売れるゲームのコンセプトを考えることだ。先輩からはこのゼロイチの部分を任されていると言っても過言じゃない。
形にするのは先輩やその他のスタッフと一緒に頑張ればいい。
だから、なんとしてでも捻り出さないといけない。
ズズズッ、と麺を啜る。あれ、見た目とは裏腹にピリ辛だ。海鮮系のスープといい感じにマッチしてて美味しい。あ、タイマー切り忘れてた。うるさいうるさい。
「はぁー、他のゲームとか触ってみよかなー」
「ん、何だ? ゲームするのか?」
「え、先輩? 帰ってきてたんですか?」
「今帰ってきたところだ。コーヒーでも飲もうと思ってな。そういえば、 "彼"ログインしてるぞ? どうやらユグドラシルにまた挑戦するみたいだ」
「え! 本当ですか!!」
彼の生態を観察するのはとても面白い。私の思いもよらないことをしてくれるからだ。ただ、それに甘えていちゃいけない。そんな彼みたいな奇想天外な人でも驚かせられるようなゲームを私は考えないといけないから。
「ちょっと待って、この人いきなりティラノをテイムしようとしてません!!??」
やっぱりこの人は頭がおかしい。
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お久しぶりです!
こっちもちょくちょく更新できるといいなー
死にたがりが逝く!〜運営編〜 magnet @magnetn
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