episode2 お迎え
「ここはどこだ…?」
夢だと思った。顔をつねったり、体のあらゆるところを引っ叩いたりしたがしっかりと感じた痛み。
いやそれでも今も夢だと疑っている。
人型の龍、耳の上端が尖がった者、スライムまでが街の至る所にいる。空を見上げれば鳥や飛行機などではなく様々な生物、いわばモンスターが飛行している。
街並みも日本ではあまり見られない恐らくレンガで作られた建物がずらりと聳え立っている。
まるで漫画のような世界。
「おい」
気が付くと俺は、武装したモンスターに取り囲まれてしまっていた。
「なっ…!なんだ…⁉」
「貴様どうやって侵入した?下等な人間がなぜこの場所に…」
メイスのようなものを喉元にあてられ、詰め寄られる。
突然知らない世界に飛ばされたと思ったら、いきなりなんだよこれ。
そもそも侵入したも何も、俺はただ自分の荷物を取り返すために猫を追いかけてトンネルを抜けただけだ。
どうやってここに侵入できたのかなんてこっちが聞きたい。
俺が何と答えようか頭をぐるぐると悩ませていたところ、何も答えないことにモンスターが激高する。
「答えないのならそのまま死ね、下等種族が!!」
(え?ちょっと待って、もしかして俺、殺され———)
「待ちなさい」
俺の喉仏を突きさそうとしていたメイスが、その直前でピタリと止まった。
「は、
俺を取り込んでいたモンスターたちの後ろに一人立つ女性。
モンスターたちはその彼女に向かって跪く。
「警備ご苦労様、
「はっ!侵入者発見につき、排除しようとしていたところで…」
白髪のさらさらとしたボブヘアに宝石のような紫色の瞳、メイド服を身につけたまさしく美少女。彼女の手には先ほど陽向の荷物を盗んだ猫もいた。
こちらに近づくにつれて、彼女の甘くもどこか落ち着く匂いが香る。
彼女は俺の目の前まで歩み進め————跪く。
「⁉」
後ろのつい先ほど俺を殺そうとした
「ご無礼をお許しください。ご主人様」
彼女は俺に向かってそう発す。俺に向かって…?
「ご主人様…?俺が…?人違いでは…」
「ヒナタ・アマネ様」
名前を呼ばれてびくりとした。
「私は人間違いなど安易なミスは致しませんよ」
「い、いや、でも俺、あなたと会ったことありませんよね…?」
無論こんな美少女など、俺は知らない。
一度会えば絶対に忘れることはないだろう。
「はい、これが初対面です。ご主人様、色々と突然のことで混乱してらっしゃると思いますが、時間がありません。これからすぐに即位式へ向かうため、お迎えに上がりました。」
「初対面なのになんで俺の名前を知って…、って時間がない?即位式?」
彼女はいったい何を言っているのだろうか。
天皇陛下が皇位を継承する儀式のことを即位礼といった気がするが、もちろん俺は天皇陛下ではないただの一般国民だ。
なんなら、底辺大学生に片足を突っ込んでいるレベルの人間だ。
「はい、即位式―――あなたがこの国の”王”となられるための式典です」
「え?王?」
人間が最低階級の異世界に、最強国家の王として転移してしまった様ですが。 橋口むぎ @hashiguchi_shousetsu
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