箸休め マーベラスなクモ! ④クモの祖先は地中に棲んでいた?

 ※文末に今回の「まとめ」を掲載しています。

  お時間のない方は、一番下まで画面をスクロールさせて下さい。


 もう一週間もクモの図鑑とにらみ合っている今回のシリーズ。


 前回はクモの解剖を見ると言う苦行に耐え、彼等の呼吸を解説しました。

 今回はJCを性的消費して、お手軽にPVを稼ぐつもりだったのに、なぜこうなった。


 ◇種を作る植物より鋏角類きょうかくるいのほうが古い!


 クモと同じ鋏角類きょうかくるいのカブトガニは、「生きた化石」と呼ばれます。


 実際、彼等は恐ろしく古い生き物で、4億4500万年前の地層からも発見されています。

 ちなみに恐竜で有名なジュラが、2億100万年前から1億4500万年前程度のことです。


 このことからも分かる通り、鋏角類きょうかくるいは長い歴史を持つグループです。

 恐竜はもちろんですが、種を作る植物よりも先に出現しています。


 カブトガニについて詳しく知りたい方は、こちらをごらん下さい。 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883436079/episodes/1177354054883451432

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883436079/episodes/1177354054883451443

 URLをクリックすると、該当する回に飛びます。


 ◇シルルには生態系の頂点に立った!


 鋏角類きょうかくるいの起源に付いては諸説あり、現在も結論は出ていません。

 ただカンブリアには既に、鋏角類きょうかくるいの祖先と思われる生物が存在しました。


 カンブリアとは時代の名前で、今から5億4100万年前から4億8500万年前程度を指します。


 この時代より前の地球には、わずかな種類の生物しかいませんでした。

 しかし、カンブリアには急激に多様化し、約一万種の生物が出現したと見られています。

 有名な三葉虫さんようちゅうやアノマロカリスも、この時代に出現した生物です。


 ただし生物の多様化には、「化石になりやすい生き物が増えただけ」と言う説もあります。

 確かに化石が見付からなかったら、色々な生き物がいても知りようがありません(笑)。


 少なくとも約4億7000万年前には、鋏角類きょうかくるいの仲間が存在しました。


 彼等はカブトガニとは別の鋏角類きょうかくるいで、既に絶滅してしまった生物です。

 約4億年前のシルルと呼ばれる時代には、生態系の頂点に立ったと言われています。

 この辺は別のシリーズで解説するので、どうかお楽しみに。


 ◇クモの祖先は水中の生きもの?


 カブトガニは水中で暮らす生き物ですが、陸上でも活動することが可能です。

 しかも前回紹介した「書鰓しょさい」さえ濡れていれば、数日間は生きていられます。


 クモの祖先も、最初は水中で暮らしていました。

 その証拠に前回取り上げた「書肺しょはい」は、書鰓しょさいが変化したものです。


 クモが陸上で暮らすようになった時期は、現在も分かっていません。

 代名詞である糸も、いつ頃獲得したのかは謎のままです。


 約2億9900万年前のものと思われる化石は、現在のクモとほぼ同じ姿をしています。

 ただ糸は出せても、現代のクモのように巣は張っていなかったかも知れません。


 ◇大昔のクモはハラフシグモに似ている


 太古のクモは、ハラフシグモしゅによく似ています。


 ハラフシグモはクモの中でも、非常に原始的なグループです。

 カブトガニと同じく、「生きた化石」と呼ばれることも少なくありません。

 現に彼等は書肺しょはいを四つ持つクモで、気管きかんは持っていません。


 また普通のクモは、糸を出すイボが後体こうたい(お尻)の先端にあります。

 しかしハラフシグモのクモは特殊で、イボが後体こうたい(お尻)の中央に存在します。

 更に第2回で紹介した触肢しょくしが極めて大きく、九本目、一〇本目のあしに見えるのが特徴です。

 日本の九州や沖縄にも、キムラグモ、ヤンバルキムラグモと言った種類が棲息しています。


 ハラフシグモのクモは、巣を張りません。

 その代わり、崖や斜面に巣穴を掘り、地中で生活しています。


 これだけでも見付けにくいのですが、彼等の巣穴には糸で作ったドアが付いています。

 しかもドアの外側は、カモフラージュのために土やコケで覆われています。

 完全に周囲と一体化しているため、注意しないと見落としてしまうかも知れません。


 彼等はじっと巣穴に潜み、獲物が近くを通るのを待ちます。

 そして待望の時が来ると、素早く獲物に飛び掛かり、巣穴に引き込んでしまいます。


 ◇クモの祖先は地中で暮らしていた?


 ハラフシグモに似ている古代のクモも、地中で暮らしていたのかも知れません。


 事実、同じく原始的なトタテグモのクモたちも、地中で生活しています。

 彼等の巣穴にもやはりドアがあり、獲物が通ると飛び出すことで有名です。


 しかし最初は地中で暮らしていたなら、いつから巣を張るようになったのでしょうか?


 残念ながら、この問題にも明確な答えは出ていません。

 ただ約1億年前の地層からは、アシナガグモの仲間と思われる化石が発見されています。


 アシナガグモの多くは、水平に網を張る習性を持っています。

 1億年前のクモも網を張り、獲物を捕らえていた可能性は高いでしょう。


 ◇巣を張るクモは意外と少ない!?


 実を言うと、網を張るクモの種類は、全体の半数程度です。

 残りはハエトリグモのように徘徊し、積極的に獲物を探します。


 前者のタイプと後者のタイプは、身体の構造に微妙な違いがあります。

 判断基準になるのは、あしの先端に生えた爪です。


 ◇三本の爪を持つクモはインドア派! 二本の爪を持つクモは行動派!


 網を張るタイプは、あしの先端に三本の爪が生えています。

 しかし徘徊するタイプのクモは、二本しか爪が生えていません。

 ただし全てのクモに当てはまるわけではなく、例外も存在します。


 専門的には、三本の爪を持つクモを「三爪類さんそうるい」と言います。


 一方、二本の爪を持つタイプは、「二爪類にそうるい」と呼ばれます。


 ちょこちょこと動き回るハエトリグモは、もちろん二爪類にそうるいです。

 黒いヤツを探し回ってくれる(ありがた迷惑)アシダカグモも、こちらに該当します。


 ただし徘徊するクモも、糸を出す能力は失っていません。


 現にアシダカグモは、卵を糸で包む習性を持っています。

 またハエトリグモも、落ちた時のために糸を引いて歩いています。


 長くなったので、今回はここまで。

 次回はいよいよ恐ろしい毒グモに迫ります。


 ◇今回のまとめ


 ☆鋏角類きょうかくるいはとても歴史の長いグループ。恐竜や種を作る植物より古株ふるかぶ


 ☆約5億年前には既に、鋏角類きょうかくるいの祖先と思われる生き物がいた。


 ☆クモの祖先は、水中で暮らしていた。


 ☆クモは約2億9900万年前の時点で、現在とほぼ同じ姿だった。


 ☆太古のクモは、ハラフシグモのクモに似ている。


 ☆ハラフシグモは原始的なグループで、「生きた化石」と呼ばれる。


 ☆ハラフシグモのクモは、巣を張らない。その代わり、崖や斜面に穴を掘り、地中で暮らしている。獲物が通り掛かると、巣穴から飛び出して捕らえる。


 ☆ハラフシグモの巣穴には、糸で作ったドアが付いている。


 ☆太古のクモは巣を張らず、地中で暮らしていた(かも知れない)。


 ☆クモが巣を張るようになった時期は分かっていない。ただし約1億年前の地層からは、アシナガグモの仲間の化石が発見されている。


 ☆約半分の種類のクモは、巣を張らない。ハエトリグモのように徘徊し、エサを探す。


 ☆網を張るタイプのクモは、あしの先に三本の爪が生えている(例外あり)。


 ☆徘徊するタイプのクモは、爪が二本しかない(例外あり)。


 ☆三本の爪を持つクモは、「三爪類さんそうるい」と呼ばれる。


 ☆二本の爪しかないクモは、「二爪類にそうるい」と呼ばれる。


 ◇参考資料


 クモ学 摩訶不思議な八本足の世界

 小野展嗣著 東海大学出版会著


 ネイチャーガイド 日本のクモ

 新海栄一著 (株)文一総合出版刊


 ヤマケイ情報箱 田んぼの生き物図鑑

 内山りゅう著 (株)山と渓谷社刊


 クモの奇妙な世界 その姿・行動・能力のすべて

 馬場友希著 一般社団法人 家の光協会刊


 大アマゾン展 公式ガイドブック

 岩科司監修 TBSテレビ発行

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