色々な色 ②テメェらの血は何色だァー!?

 色にまつわわるアレコレを語る今回のシリーズ。

 前回は主に、赤のポジティブな面を取り上げました。

 しかし実際のところ、赤にはよいイメージばかりがあるわけではありません。


 炎や血を想起させる赤は、人間に危機感を抱かせる色でもあります。

 現に赤信号や消防車は赤い色で、我々に注意を促しています。また大切な警告文は、赤い文字で記されていることがほとんどです。


 そもそも人間の血が赤いのは、赤血球せっけっきゅうに「ヘモグロビン」が含まれているためです。


 ヘモグロビンは赤血球せっけっきゅうの主成分で、酸素を全身に運ぶ役目をになっています。その名の通り、グロビンと言うタンパク質と、ヘムと言う色素で構成されています。


 赤血球せっけっきゅうは円盤状の細胞で、裏表とも中央がくぼんでいます。

 一般的な成人男性の身体には、約20超個もの赤血球せっけっきゅうが存在します。しかも、骨の中央にある骨髄こつずいでは、毎秒1700万個もの赤血球せっけっきゅうが新しく生み出されています。


 一般に人間の体重の8㌫は、血液の重さだと言われています。つまり体重60㌔の人なら、5㌔近くが血液の重さと言うことになります。


 全身の血管を繋ぐと、その長さは10万㌔近くになってしまいます。

 参考までに言うと、赤道一周の距離が約4万㌔です。2㍍に満たない人間に地球二周分以上の長さが収まっているとは、驚きを感じずにはいられません。


 冒頭で語ったように、我々には「血は赤いもの」と言うイメージがあります。


 実際、多くの動物は、赤い血液を持っています。

 イヌやネコは勿論もちろん、ヘビやトカゲでも、傷口からは赤い血が流れます。スーパーで買った魚から緑色の血が流れてきたら、クレームものです。


 ただし、全ての生物が赤い血を持っているわけではありません。


 代表例が、カブトガニです。


 彼等はカブトガニもくカブトガニに属する節足せっそく動物どうぶつで、干潟ひがた住処すみかにしています。現在、地球上には4種類のカブトガニが棲息しており、日本でも見ることが出来ます。


 以前、『亡霊葬稿ゴーストライターシュネヴィ』の番外編(『風来のトガリネズミ』の回)で紹介したトガリネズミは、トガリ「ネズミ」のクセに「モグラ」の仲間でした。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881358290/episodes/1177354054881824136


 同様にカブト「ガニ」も、カニの仲間ではありません。

 彼等はカニやエビを含む「甲殻こうかくるい」ではなく、クモやサソリと同じ「鋏角きょうかくるい」に分類されています。


 事実、カニ大好きな日本人でも、彼等を食卓に乗せることはありません。一方、中国やタイではポピュラーな食材で、市場でも売られているそうです。


 日本に棲む種は体長70㌢前後で、瀬戸せと内海ないかいや北九州の沿岸部で暮らしています。


 無骨な甲羅の裏には、6つい計12本のあしが生えています。一番前の1ついは他のあしより小振りで、エサを食べるのに使われるそうです。


 鋏角きょうかくと呼ばれるそれは鋏角きょうかくるいだけが持つ器官で、サソリやクモも同じものを持っています。驚くべきことに、彼等のあしには臭いを感じ取る能力があるそうです。


 鋏角きょうかくるいの仲間同様、彼等もまた肉食で、ゴカイや貝、魚などをエサにします。なんと彼等が口にした食べ物は、脳を通過して胃や腸に送られるとか。


 腹部には本のページを並べたようなエラがあり、書鰓しょさいと呼ばれています。

 エラを持っていることからも判る通り、彼等は基本的に水中の生き物です。しかし、書鰓しょさいさえ濡れていれば、数日間は陸上でも生きられるそうです。


 きりのように鋭い尾は、尾剣びけんと呼ばれています。

 見るからに武器のような尾剣びけんですが、実際は水中で身体を固定するのに使われています。またあおけになってしまった時も、尾剣びけんを地面に刺してうつぶせに戻ります。


 カブトガニの身体の構造は、遥か古代からほとんど変わっていません。

 この点を指し、彼等を「生きている化石」と呼ぶこともあります。


 もっとも、「生きている化石」は彼等だけの肩書きではありません。

 この地球には、昔ながらの姿を残した生物が多く存在します。


 有名ゆうめいどころと言えば、オウムガイやシーラカンスでしょうか。また水族館で目にすることの多いタカアシガニや、身近にえるイチョウも生きている化石の一つです。あ、ついでに台所で遭遇する黒い悪魔も。早くただの化石になって欲しい……。


 カブトガニの仲間の化石は、4億4500万年前の地層からも発見されています。

 恐竜の闊歩かっぽしていた白亜はくあが1億4400万年前と言えば、彼等がいかに古株なのかお判り頂けるのではないでしょうか。


 カブトガニが出現して以来、地球では五度に渡って大量絶滅が起こっています。特に2億5000万年前、ペルムの末期には、地球史上最悪の大量絶滅が発生しました。


 別の作品で使って……ゴホン、わけあって詳しい説明は控えますが、この時、90㌫以上の種が地球上から姿を消したと言います。海洋生物も甚大な被害を受けましたが、カブトガニがえることはありませんでした。


 長くなったので、今回はここまで。

 カブトガニの血が何色なのかは、次回をお待ち下さい。


 参考資料:絶滅したふしぎな巨大生物

          川崎悟司著 (株)PHP研究所刊

      ならべてくらべる動物進化図鑑

          川崎悟司著 (株)ブックマン社刊

      トンデモない生き物たち

          白石拓著 (株)宝島社刊

      地球ドラマチック 「血液の不思議~知られざる驚異の力~」

          2015年8月22日放送 放送局:NHKEテレ

      地球ドラマチック 「生きた化石 カブトガニ

                       ~知られざる太古の力~」

          2014年6月21日放送 放送局:NHKEテレ

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