凶器のない殺人
「魔法を使える種族」と聞いたら、多くの人はエルフのような姿を想像するだろう。
しかし実際のところ、人間と〈
事実、ディゲルは〈
ただし、〈
わざわざ確認するまでもないが、人間は〈
でなければ、いもしないカミサマを妄想し、のさばらせることもなかったはずだ。
一方、〈
また同時に、〈
実を言うと、〈
と言うか、人間以外の全生物は、例外なく〈
ただし、〈
〈
指先から炎を放つ――。
敵に雷を落とす――。
本来ならRPGでしか出来ない
〈
もちろん、〈
大体、何もかも思い通りになるなら、今頃、全宇宙は〈
現状、世界一の〈
一般的には、死人を生き返らせることも不可能と言われている。
他にも〈
そのため、〈
ただ技術だろうが、魔法だろうが、人間にとって脅威であることに違いはない。
科学の発展と共に、人間は強力な兵器を手にした。
〈
しかし強力な兵器を使えば、大きな被害が出る。
第一、事件の度に戦車や戦闘機を出動させていたら、費用が掛かって仕方ない。
また非常識な〈
既存の価値観に囚われた警察では、奇々怪々な事件を解明することは難しい。
そこで人間は、〈
一般人に対し、〈
警察や政治家に目を向けても、真実を知るのはごく一部の人間だけだ。
しかし各国は密かに〈
普通の国家には、警察や軍隊がある。
同じように〈
ディゲルが率いる〈
主に日本を中心に活動し、人々を〈
少し特殊な点は、国の機関ではないことだ。
日本は奇妙な国で、〈
古くから〈
また他の組織と異なり、〈
戦力の
涼璃もまた「
急に敵が襲って来た時の用心棒として、捜査に同行することも少なくない。
「……凶器はまだ判明してないの?」
涼璃が質問すると、ディゲルは小馬鹿にするように笑う。
「おいおい、人間の首が切断されたんだぞ? 刃物以外にあり得んだろうが。まあ、刃に実体があるかどうかまでは分からんがな」
ディゲルは素早く腕を振り、鋭い風音を響かせる。
たぶん、〈
「刃物を使ったにしては、切断面が汚くない?」
涼璃は床に腹這いになり、生首を覗き込んでみる。
胴体と繋がっていた部分は、ギザギザにちぎれている。
ぽつぽつと穴の
何とかして胴体に縫合しようとしても、ぴったりとはくっつかないだろう。
首の骨の断面もデコボコで、ヤスリを掛けたようにザラザラしている。
不用意に触れたら、すり傷を負ってしまうかも知れない。
「切れ味の悪い刃を使ったのかも知れん。正直、あまり考えたくない話だがな」
ディゲルは顔を歪ませ、胸焼けを起こしたように舌を出す。
確かに、どうせ首を切り落とされるなら、スパッ! とやられたほうが楽だ。
じわじわ斬首されるなんて、考えただけで鳥肌が立つ。
「でもさ、少しずつ首を切られたら、さすがに暴れない? 監視カメラを見ても、特別変わった様子はなかったんでしょ?」
「犯人が麻酔を掛けたって線もあるが、確かに気になるな」
「血もほとんど出てないよね?」
首を通る
切断すれば、大量の血が噴き出す。
にもかかわらず、遺体の周囲には僅かな血痕しか見当たらない。
店内を見回してみても、
派手に汚れた場所から、遺体を移動させたわけでもなさそうだ。
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