内田樹「コロナ後の世界」と政策の成否と専門家

丸い円

内田樹「コロナ後の世界」と政策の成否と専門家

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が世界中で流行しています。SNSや報道を見ていて思うところがあったので文章にしたためました。最初に断っておきますが、私はいかなる分野の専門家でもありません。

 さて、私がこの文章を書こうと思った理由は先に述べましたが、直接的な理由はTwitterで、ある文章を目にしたからです。その文章とは、内田樹氏が自身のブログで発表した「コロナ後の世界」です。内容に関しては後述しますが、私はそれを読んで衝撃を受けました。内田樹氏と言えば高校生の頃、入試現代文において大変お目にかかった方で、その都度楽しく読ませていただいておりました。しかしながら「コロナ後の世界」では感情が論理を上回った状態の文章が散見されました。あのような興味深い文章を書かれていた方でさえ、感情の虜になってしまうということに私は悲しい気分になりました。まあ、あの方に関してはどうも政治的な思想が強く影響しているようですが……。

 興味のある方は、後書きの欄にURLを記載しておりますので一度読んでみてください。そこまでするのが面倒だという方はこのまま読み進めていただいても大丈夫です。彼の政治的思想はさておき、文章の内容それ自体について、最も疑問に思ったのは彼が日本の政策は完全に失敗した、中国と韓国は上手くやっている。といった主張を何度もされていたからです。ここで問題です。果たしてその主張は正しいのでしょうか。

 答えは「わからない」です。真剣に考えてくれていた方には申し訳ありませんが、そうとしか言えないと思います。その理由について説明していきましょう。理由は2つあります。まず1つ目、状況が終息していないからです。確かに地域的に見れば封じ込めに成功したところもあるかもしれませんが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は現在も世界中で感染が見られており、到底終息したとは言えません。撲滅するのか、インフルエンザのように共存していくのか、行く末はわかりませんが、少なくとも現段階で成功・失敗の判断はできないというのが正しい答えだと思います。仮に彼が成功していると挙げた中国や韓国で、再度感染が拡大しても、それは成功と判断して良いのでしょうか。そもそも政策に絶対的な正誤があるかも不明ですが、その政策が有用か有用でないか、ということですら判断するのは非常に難しいことです。一方の側から見れば成功でも、もう一方から見れば失敗かもしれません。さらに、10年後のことを考えれば損をする政策でも、100年後には得をするかもしれません。それくらい政策の成否を判断するのは難しいのです。それを前提として彼の主張を見ると、その判断が少なくとも時期尚早であることは明白ではないでしょうか。

 2つ目は、彼と私たちが専門家ではないからです。今回の場合、相手が感染症ですからそれに対応するのは公衆衛生学や疫学といった専門分野になります。もちろんウイルス学や臨床分野も対応しますが、ここではより大きな視点から考えていきますので一旦除外して考えます。さて、内田樹氏は公衆衛生学や疫学の専門家でしょうか。違いますよね。彼の本職はフランス文学者です。もちろん私も専門家ではありません。あなたはどうでしょうか。公衆衛生学や疫学の専門家だというのならこれより先を読む必要はありません。研究ご苦労様です。日本と世界のためにこれからもよろしくお願いします。しかし大多数の方はそうではないと思います。ならどうして成功失敗を判断できるのでしょうか。公衆衛生学や疫学は高度な科学です。何も勉強していない素人が理解できるものではありません。例えば宇宙物理学や量子力学の理論に文句を付けようとは思わないでしょう。それと同じことです。もちろん今回の場合は日常生活に関係しているため、それとは違うということも理解しています。ここで言いたいのは、私たちは科学的にこうだったからこの政策は失敗である、と断言できるのかということです。私は難しいと考えます。つまり彼も私たちも政策の成否を科学的に判断することはできないのです。

 以上の理由により、彼の主張は「わからない」というのが正解です。もちろんどう思うかは自由です。その主張に賛同したり否定したりすることはできますが、主張そのものは「わからない」のです。

 繰り返し強調しますが、批判するなと言っているわけではありません。少なくとも多くの民主主義国家においては思想良心の自由や言論の自由は認められていますし、それは手放してはならない大切な権利だと思います。ただ、素人が、今の段階で、政策の成否を判断することは難しいというだけです。それを理解した上で報道に接し、文章を読んで、意見を述べていただければと思っています。私の文章にご意見ご感想がある方も多いと思いますが、それを踏まえた上で、感想を述べていただければ大変嬉しく思います。そういうご感想には誠意を持って丁寧に私の意見を伝えさせていただきます。

 本当はデマの話等も書きたかったのですが、軸がぶれそうだったのでここで筆を置きたいと思います。そのうち別の話で触れると思うので、そこでお会いしましょう。私の文章が少しでも皆様に何かを与えることができていれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

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