『Rosetta』

【覚書】『Rosetta』

 Rosetta

 https://kakuyomu.jp/works/16816700428127131964


 作品を書く上で参考にした諸々や落とし込めなかったアイデアの覚書です。


◆Rosetta

 某所にて、絶対死にたいウーマンの人魚と絶対死なせないマンのムカデ人間(頭がムカデで躰が人間)が織りなすハートフルストーリーを昔書いていた──みたいな話をした憶えがあるのだけれど、そのタイトルがコレ。ロゼッタはヒロインである人魚の名前である。そのタイトルを本作に適用したことについて、別段深い意味はない。強いて云うなら、誕生日が近かったので。


◆Eureka

 コーヒーにスプーンを浸してからの一連の流れが、アルキメデスが浮力の原理を発見した瞬間に似ているよねなどと思ったため。推敲の時点ではそれをにおわせる描写があったものの、何やら押しつけがましく感じられたのでなかったことにした。「エウレカ(われ発見せり)!」


◆あの日から、もう二度とまろび出ぬようにと封印していた相づちがあっさり転び出る程度には焦った。

 開始早々『安定限界』の下記エピソードを読了している人間でなければ、理解できない独白である。

 04『サウザンクロス』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054891697622/episodes/1177354054891783586


 本作は『安定限界』の「僕」と『僕は小説を書くのが好きで好きで堪らないヤツが憎くて憎くて仕方がない』の「僕」がさも同一人物であるかのような構造になっているが、実際のところそんなことはなく──。

 というより、そもそも本作の視点人物である「コロムビアとモカの違いがわからぬどころか、店を選ぶ気配りもできない男」である「僕」と『僕は(以下略)』の視点人物である「僕」が、同一人物であるという保証はどこにもないので。

 どう見ても『安定限界』でやれと云わざるを得ないシーンに、「キヨモリ」「桐宇治さん」の名前が出てこないのもそのためだったりする。符号が一致しているだけで、“この”二人が“あの”二人である必要はない。


◆「選択を誤りました」

 別段紅茶通を気取るつもりはないが、あの飲み物コーヒーに比べて美味しく淹れる(かつ美味しい状態を保つ)の難し過ぎない??


◆『神々の沈黙』

 正式なタイトルは『神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡』。とはいえ、私は本書の存在をオリヴァー・サックス著『幻覚の脳科学──見てしまう人びと』から知ったクチなので、実物を手に取ったことはない。

 ジェインズによると、紀元前一〇〇〇年頃、意識の誕生とともに声は内面化し、自分自身のものとして認識されるようになった──らしい。統合失調症などの幻聴もある種の先祖返りが起こっているのではないかとするのが、ジェインズの考え。

 兎角なぜ聞こえるのかではなく、なぜ聞こえないのかに着目したところは凄く面白いと思う。

 

◆何だかんだ造りのイヤホン

 件の「僕」はあくまでキヨモリっぽい男子高校生なのだが、オレンジイエローとのコントラストは「世界で一番綺麗」と褒めるくせに、イヤホンオンリーとなった途端、明らか私情挟んだ調子でジャブ程度にディスるの実にキヨモリっぽくて好きだよ。


◆情緒性の滴

 涙には、基礎分泌としての涙、反射性の涙、情緒性の涙の三種類があるのだけれど、うち情緒性──すなわち感情が絡む涙にはストレスホルモンが含まれている。「泣くとなんだかスッキリするよね!」の「なんだか」はどうやら気のせいではないらしい。

 ところで、体液の中でも涙ほど嫌悪感覚えない液体ってないのではなかろうか。他人の唾液に触るのは拒否反応示すけど、涙ってそこまで厭ではないじゃないですか。同じ体液なのに。何か目にすると「慰めなきゃ!」という心情に訴えるものがあるのだろうなぁと思う。


◆精一杯だよ。

 キヨモリっぽい男子高校生が桐宇治さんっぽい女子高校生の涙を拭うという大役に自身を抜擢する光景がどうあがいてもイメージできなかった結果、重力が上を向いた。

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