「#RTした人の小説を読みにいく」で読んだ作品の感想を垂れ流すだけ

『虚空の寄る辺』 作者 畦道伊椀

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054939847221


 全体的なこなれ感がすごい。第4話の情景描写を「キャハハと、黄色い笑い声。」のみに留めるあたりとか。演出として所謂"文字の壁"(意図的に改行を少なくする。商業作家だと嶽本野ばらさんとかがそう)を用いている方だとは思うのですが、個人的に「ここの密度を高めるのか」と意外に思わされる箇所もあり。

 その辺りの感性の違いを比較するのが面白かったです。

 タグに「ライトノベル」とある通り、設計は基本親切──第2話『いつもの学校』レオとアキが小さい頃から一緒だったり、ふたりの高校生活がいつから始まったのかといった情報を会話のやりとりのみで読み手に示唆するあたり。とてもライトノベルらしい──なのだけれど、あらすじから恐らく物語の主人公となるのであろう「『助けたら、助けてもらえる世界』を夢見る少年、直弼レンジ」が第5話からようやっと登場するなど少々トリッキー過ぎやしないかと感じる点も。

 作品紹介文を熟読してやって来た読み手は、むしろ混乱する可能性が微レ存(死語)。

 散見される「むごいほど」という強調表現が印象的。多分お気に入りの云い回しなのだろうなぁ──とにやにやしながら読ませていただきました。こういうのを持っている書き手は好きです。


『ハッピーハッピーバースデー』 作者 りう

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888291494


 web小説が巧い。その一言に尽きると思います。

 ──これで締めくくってしまうと流石に手抜きだと思われそうなので、少々加筆。各回の引きが巧いので、最後まで読ませることにとても長けた作品だと思います。「先が気になるので続きを読みたい!」というよりは「先は大体読めるけどテンポの良さでついつい続きを押してしまう」という印象。これもまたweb小説界隈では重要なテクニックの一つだよなぁと(実際『新着 20:31 お姉ちゃん』の「火薬が弾けるような乾いた音」から先の展開を予測するなという方が困難である)。

 なので、web小説が巧い。それに尽きます。


『奴隷屋の日常』 作者 坂牧 祀

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054906430958


 冒頭「いつも涼やかな音で来客を知らせてくれるドアベル。きちんと清掃が行き届いた店内。~」と続いたときは、これといった理由もないのにとりあえず情景を説明してくるあのタイプかと一瞬身構えてしまったが、続くエピソード「店主と従業員①」で上記のそれが他の奴隷屋にはない『清潔さ』を際立たせる描写──つまりは物語にとって必要な表現であるとわかり、「私が早計でした。すみませんでしたっ!」などと二礼二拍手一礼しました。

 淡々とした文体が中高生の頃に読んでいた時雨沢恵一作品を彷彿とさせます。こと読みやすさという点にフォーカスすると、今回「#RTした人の小説を読みにいく」で集まった作品の中でも随一ではあるまいか。

 残酷と云えば残酷なのだけれど、下品な残酷さではないところに作者のこだわりを感じます。 

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