可惜夜にあなた お誂え向きですね 『希う』
【楽曲紹介】
『希う』 作詞・作曲・編曲:粗品
https://www.youtube.com/watch?v=cKNtpQLeny8
もし「あなたが一番美しいと思う日本語は何ですか」と訊かれたら、私は間髪入れずに「さようなら」と答えるだろう。──ゴメン云って早々なんだけど間髪入れずにはちょっと誇張したかもしれない。
さようならの語源は「そうならねばならぬのなら」あるいは「そうならなければならないなら」だそうで(注視していると「な」がゲシュタルト崩壊を起こしそうだ)──とどのつまり、お互い好きで別れを告げているわけではないのだ。
二人の間に意思が介在する余地はなく。「そういうことなら仕方ないよね」という諦めに似た境地が、語られることのない先に寂しく潜んでいるのである。
とはいえ、
これまでを振り返り、今を確かめ、
さて、今回紹介させてもらう楽曲だが、またも霜降り明星の粗品さんによるボカロ曲である(当然と云えば当然なのだが、YouTubeのアイコンが欠片もボカロPっぽくなくて見るたび笑ってしまう)。「明けるのが惜しいほど素晴らしい夜が、あなたにはよくお似合いですね」を「
「小説は書き出しが肝心」などと云うが、皆さまお察しの通りこれは何も小説に限った話ではないし、これまた云わずもがな書き出し良ければ全て良し──という話でもない。
某メンタリスト(はたして某を使う意味とは)は『コピーライティングの科学〜人を操る「刺さる」「儲かる」言葉の作り方』の中で「一行目は二行目を読ませるためにある。二行目は三行目を読ませるためにある」と述べている。
この世には、肝心な行とチョー肝心な行しか存在しない。
たとえるなら、強いキャラとチョー強いキャラしかいない『北斗の拳』の格ゲーみたいなものである。──はて、このたとえは必要だったのだろうか。余談だが、私の思う一際すげぇ冒頭はウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』である(舌の先が
もっとも、小説における"掴み"のある一行目というのは、読者の趣味嗜好が大いに反映されるので──伊坂幸太郎先生のたとえを拝借するなら「ドアを開けたら象がいた」という冒頭が好みの人もいれば、「五丁目のコンビニから『ロード・オブ・ザ・リング』の世界に入っていく」冒頭が好みの人だっているだろう。
前者は異世界が何の前触れもなく押し寄せてきたという展開で、後者は現実を生きているうち気付けば異世界に迷い込んでいた──という展開である。
つまるところ、最適解がない。いや、あると云えばあるのだろうが、それは売り上げを目的とした場合にのみ──ターゲットとなる層を明確に絞った場合にのみ、万に一つあり得るのではないかと思う。
それゆえ、ある程度書籍化を意識しているのであればともかく、本当にただ書きたくて書いているだけのそれには最適解足る一行目など存在しない──ような気もする。
まあ、その辺りの自由度がweb小説とやらの面白さなのではなかろうか。
ところで──件の曲中には「0.875は誰の背中 0.75キロの空の重さを 0.625は誰の名前」というあまりにも意味深な歌詞が含まれている。こちら、優秀な考察班によって「まずこの解釈で間違いないだろう」という一応の解が示されてしまったのだけれど。
私は、結構この手の歌詞は流してしまうタイプである。『これを読んでいるあなただって、いつまでも"ここ"にいるわけじゃあないだろう。』でも触れたが、アレだ、認知的完結欲求が低いので。考察が面倒とかでは断じてなく、曖昧と不明瞭を受け容れる
これを読んでいるあなただって、いつまでも"ここ"にいるわけじゃあないだろう。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896176243/episodes/1177354054912585348
──姫乃只紫は読者に面白いと思ってもらえるような作品ではなく、読者の認知的完結欲求を下げるような作品が書きたい。そう常日頃から願って止まないみたいなところあるから(震え声)。
そういえば、私は『瑕R255G255B255』の中で「こいねがう」を表すのに「乞い願う」を使った。
字面としては「希う」の方が好みだが、あのときは「乞い願う」の方が私の心象を表すによりふさわしいと思えたので。
EX.今日明日にでも死のう死のうと思って止まない物書きたちへ 『瑕R255G255B255』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896176243/episodes/1177354054899906473
──しかし、相も変わらずpopman3580さんによるイラストが可愛い。撥水素材っぽいフルジップ(もしくはジップアップ)のスポーティーなトップスに、フリルスカートと青のカラータイツ、オーソドックスな外しでこなれ感を演出して(かつ見る者を油断させて)おきながらビニ傘でトドメをさしてくるとか、
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