私流れ星なんて一度も見たことない! 『ビームが撃てたらいいのに』

【楽曲紹介】

『ビームが撃てたらいいのに』 作詞・作曲・編曲:粗品

 https://www.youtube.com/watch?v=3Clg1WYwhNk


 Askewさんの『いつか変態になりたいキミへ』の「第50話 時間を止められたら何をする?」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054893700544/episodes/1177354054906297376)を読んで思ったのですが、そういえば時間を止める能力にそこまで強い憧れを抱いたことなかったなーって。

 やっぱり超能力って周りに「すごい!」と褒められてナンボみたいなところあるじゃないですか。時間を止める能力がまあすごいのは確かなのだけれど、アレは神の視点で見るからこそカッコイイのであって。

 たとえば──私がある日突然時間を止める能力に目覚めたとして、友人にそれを自慢したいと思ったとしましょう。友人を自宅に招いて、さあその凄さをお披露目だとなったとき、意外と──困ると思うんですよね。友人を傷付けるようなマネは論外として、そうなると時間を止めているうちにその友人の背後に回ってみせるとか、あらかじめ友人に何か持たせておいて時間を止めている隙にそれを取り上げてみせるとか。

 実際、私が能力の凄さを見せつけられる友人側に回ったとしても、リアクションに困ると思うのですよ。時間の停止を知覚できない側からしたら、マジで何が起こっているかわからないわけですし。「すごい!」というより、ただただ「お、おう」ってなりそう。

 あと、時間を止める能力が使えるとなると脊髄反射的にエチチな妄想を膨らませる人、気持ちはよくわかるし、私も世の中色んな性的嗜好の方がいるってことをね、その──アレだ。エロ同人なんかを通して、重々承知しているから。そういうの人一倍理解した上で云わせてもらうのだけれど。

 

 やっぱリアルで"リアクション"ないのってキツいと思うよ?


 ──はい、この話題をこれ以上掘り下げるつもりはありません(鋼の意思)。兎角時間を止める能力案外地味。だから、もし私が何らかの超能力を獲得できるのだとしたら、選ぶ権利を与えられているのだとしたら、もうコレ一択。そう、。いやぁ、我ながら鮮やかなタイトル回収に惚れ惚れしますねぇ(白目)。

 さて、今回紹介させていただくこの楽曲なのですが、最初に知り得たきっかけは私の最推しバーチャルシンガー花譜さんのアイスクリームライブでして(なので例の如く張っているURLは原曲のそれではない)。「どこか懐かしい感じの曲だなー」と思いつつ、ライブ後に調べてみると霜降り明星の粗品さん作のボカロ曲だったという。私お笑い界(というか芸能界)事情には疎いもので、それまで粗品さんに関しては「『ハルトマンの妖怪少女』をTwitterトレンドにブチ上げた芸人さん」くらいの認識しかなかったのですが、まさかボカロPまでされていたとは──。


 で、この『ビームが撃てたらいいのに』なんですが、二〇〇九年か二〇一〇年頃、初音ミクに"歌ってもらっていた"頃のボカロ曲って確かこんなんじゃなかったっけ──って。


 初聴しょちょうわけわかんないけど、何回か聴いているうちどこか意味深に思えてくる歌詞の感じとか特に。

 当時のニコニコ動画ボーカロイド界隈をご存じでない人からしたら、まるでついていけない話題で恐縮なのだけれど、ボーカロイド黎明期──私らは初音ミクに"歌ってもらっていた"のです。それがいつだったかを境に(このいつだったかを明記してしまうと一部過激派を刺激しかねないため、何卒なにとぞ伏せさせていただきたく)ボーカロイドはボカロPが持つ独自の世界観を表現するためのツールになってしまった──気がする。

 もちろんそういった変化があっての今なのだけれどね。何分当時の状況をリアルタイムで体験した身だったので、ついどこか否定的なニュアンスを含んでしまいましたが──。あの変化があったからこそ、ボカロPの窓口は広まったわけだし、界隈の盛り上がりは存続したわけだし、一部歌い手含め多くの人たちが才能を開花させたわけだし。


 改めて、私はビームが撃ちたい。


 思えば人間は酷く我儘なもので、「誰かから褒められたい」「すごいと思われたい」などと本能的に願う一方、その「誰か」を厳選したいという気持ちが心のどこかにあって。もちろん不特定多数の誰かに褒められるのもそれはそれで嬉しいかもしれないが、残念かな存外人はそういうアップサイドにすぐ慣れる。そして、哀しいかなその事実を察してしまっている人は、世の中に大勢いる。

 私たちは褒め言葉を求めて止まぬとき、意外と誰でもいいから褒めてくれ! とは思っていない。特定の誰かを頭の中に一方的に思い描いていて、それはもう一方的にあなたに見てほしいのですと、あなたにすごいと云ってほしいのですと、あなたの笑顔の足しになりたいのですと、だから今からすんごいことをしますと切に訴えている──気がする。


 だから、私はビームが撃ちたい。


 この曇天を秒で蹴散らすビームが撃ちたい。その鬱屈を昇華させるビームが撃ちたい。

 しかし、笑顔の足しになりたいという表現は、我ながら奥ゆかしくて良いと思う。まずは、躰のどこからビームを出すべきか、真剣に妄想するところからスタートしよう。

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