「劣等感」という武器③【ゆっくり実況誕生に学ぶ】

 前回までのあらすじ。ヒトラーVSチャップリン実質チャップリンの勝利。主人公をクビにしたことで落ちぶれたパーティを立て直すには。「学園一の美少女」はまあわかるけど「クラス一の美少女」って云うほど美少女ちゃうやろ。以上。

 持たざる者であることは、社会において必ずしも不利に働くとは限らない。大事なことなので二回云いました。

 実際、考えてみてほしいのです。生まれながらにポジティブな人間って、どんだけコミュ強でも生まれながらにネガティブな人間の気持ちなんてわからないんですよ。これまで歩んで来た道のりはもちろん、晒されてきた感情と下されてきた評価があまりにも違い過ぎるから。


 その点、生まれながらにネガティブな人間って実は得をしていて。


 ポジティブなモノの見方、コミュ強の行動パターンさえ身に着けてしまえば、必要に応じてポジティブな人間やコミュ強を装うことができるし、根っからのポジティブ人間にはマネできない、ネガティブな人間の気持ちに寄り添えるポジティブ人間(のフリをしているネガティブ人間)になれるチャンスを持っているんですよ。

 そう、ネガティブ人間はポジティブ人間なんか目指さなくていい。生まれ変わる必要なんてない。状況に応じて装えればいい。

 もちろん生まれながらにポジティブな性格、ネガティブな性格っていうのはあるんですよ? 人の性格って遺伝で五〇パーセント決まるので。それでも、百パーセントポジティブな性格になったら何もかもが上手くいくかと云われたら、そんなことないじゃないですか。

 たとえばの話、百パーセントポジティブな社員しかいない企業想像してみましょうよ。リスク取ってくぜぇ~目標は爆速で十億! 両腕胸の前で交差させてからのダブル・オーデマピゲ! 隙あらばシャンパンタワー! 合言葉は死ぬこと以外かすり傷! バックで打ち上げ花火ドーンからのI am PERFECT HUMAN! もう一回遊べるドン! もう「一刻も早く退職させて~」とさめざめと泣くほかないでしょう(ちなみに某MVにある打ち上げ花火ドーンからの自己紹介の元ネタが『グレート・ギャツビー』であることは知られているようであまり知られていない)? うん、流石に自分でも脚色というか偏見が過ぎるなと反省はしている。


 結局、ポジティブもネガティブも偏っていたら困るんですよ。


 自己啓発書とかで「とにかく自信を持て! 自己肯定感を高めろ!」みたいな助言を度々見ますけど、アレは事業に成功したから自信に満ち溢れておるわけで、自信があったから成功したとは云えませんし、「上見るな下見るな」というアドバイスも聞こえこそ非常に前向きですが、適宜上見たり下見たりした方がメンタルヘルス的にはイイよねということも明らかになっておるわけでして(詳細は「下を見て強くなれるのも また人だからさ『雨き声残響』」https://kakuyomu.jp/works/1177354054896176243/episodes/1177354054898359589参照)。


 だから私らはあくまで視座として自分の中にポジティブな面とネガティブな面をそれぞれ自覚しておいて、必要に応じてそれらを切り換えればいい。


 云うは易く行うは難し(難しというより面倒なだけという気もする。結局この手のテクニックって実践しないと何の意味もないので)なのはわかっているけど、この考えに基づいて直面している現実を解釈していくのが今のところ一番楽じゃない? イージーモードじゃない? と私は思っているので。

 あなたの劣等感はときにこれまでになかったひらめきを生み出す武器になるし、あなたのネガティブはときに行き過ぎた自分と誰かを助けるためのブレーキになり得る。

 才能の有無というものは、確かに存在するじゃないですか。実際二〇一七年のオックスフォード大学の研究で、人が将来創造性を必要とされる職業──それこそ作家とか芸術家とか、役者やダンサーですよね。そういう職業に就けるかどうかって遺伝による影響が七〇パーセントらしいので。


 ええ、クリエイティブな職種に就けるか否かは、七〇パーセント遺伝子で決まる。


 ねぇ、聞こえたワナビ~? 七〇パーセント遺伝子だって~! 聞こえた~⁈ はい、軽率にサディスティックな一面をお届けさせてもろて。

 云うて才能がないならないで、結局戦略を変えるだけと云いますか──努力の方向性を工夫していく他ないじゃないですか。積んで意味のある努力と無意味な努力はあるわけですし。これは何も世の自称才能のない人たちを励ます意図で云っているのではなく、ないならないで凡人には凡人の視座があるわけですから。前回紹介したランチェスター戦略に習えば、凡人にしか見つけられない「一点」があるかもわからんし。

 だから、これを読んでいるあなたは──「劣等感」という言葉につられてやってきたかもしれないあなたは、自分のことを凡人かミジンコかあるいはそれ以下であると信じて止まないかもしれないけれど、そんなあなたの"これから"を楽しみにしている人だってきっといると思うのですよ。

 ただそれがね、云いたかっただけ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る