第3話 この世界はゲームの世界

 最近ではよくある話だ。

 死んだあと、別の世界で強くてNewゲーム。

 本来嫌われる立場に転生するが、自身の行いを正し、良好な関係を気付いて幸せな世界へと塗り変えていく。

 そうなることを別にアタシは望んでいたわけではない。

 死んだら終わり、そうなれば楽だったのに。

 もしかしたら夢の続きかもしれない。やりかけていたゲームの二次創作を考えていた所為で、その妄想に囚われてしまったのだろう。

 アタシはそのキャラクターになりたい訳じゃない。その世界の壁や床となってキャラクターを間近で見て居たいだけだった。

 だから、手も足もない、声もなく姿もないナニカになったのだろう。


 シンシアはゲームの主人公ではなく、その妹だ。

『君に哀しみの花は似合わない』というノベルゲームに出てくる主人公の邪魔をする立場にいるキャラクターだった。

 リサが学園の3年生、シンシアは1年生の設定でゲームは進行していく。

 シンシアが入学した年に、リサのクラスに転校生がやってくる。其処から学園内で起こる不気味な事件。魔法と哀しみの花と呼ばれる呪いの花について調べながら、クラスメイトや先輩、後輩や先生のいずれかと親密度を上げて、エンディングを迎える。

 シンシアは姉と仲良くしたい、認めてほしいとよく会話に混ざろうと出てくる。しかし、彼女が姿を見せるのは大体親密度の高い男子との交流中なのだ。

 ここで妹を選択すれば、男子との親密度はあがらない。キャラクターによっては自分を選んでくれなかったと、せっかく上げた親密度が下がるという事もあるのだ。

 なので多くのプレイヤーは彼女を無視してプレイしていることが殆どだろう。

 そしてエンディングの大筋として自分を無視して幸せになろうとする姉に哀しみと怒りを抱いたシンシアが襲いかかってくる。

 此処でシンシアは姉に殺される、もしくはリサとの親密度がMAXのキャラクターに殺害される。

 シンシアの死と共に、哀しみの花が消えることから呪いの原因はシンシアだったとされ、国を救ったとしてリサは国中から感謝される。

 妹を失いはしたが、支えてくれる人が居るので前を向いて生きて行くという話だ。


 アタシは姉妹仲良くしてほしかったので、どのルートでもシンシアが救われないのが気に入らなかった。

 特に男子と仲良くせずにしていると、シンシアと遭遇することもない。本当に邪魔をするためだけに設定されたキャラクターなので、会えないのだ。

 そして誰とも仲良くしない場合、シンシアを殺すことはないが、呪いのせいで彼女は死ぬ。哀しみの花に蝕まれ、姉にもそのことを打ち明けられず、ただ一人ひっそりと死んでいる。

 そんな妹を発見し、リサは悲しみに溺れ、花の呪いを受けてしまうというバットエンドだ。

 百合を望んでいる訳じゃない、ただ、ただ、姉妹が姉妹らしく仲良くしているところが見たいだけなのだ。なのにままならない。

 だから、アタシは可能な限りシンシアをサポートして二人で仲良くなってほしいのだ。といっても、一度殺された記憶を持っている彼女が姉に対して悪意を持っているのは火を見るより明らかだ。

 だからどうやったら二人が歩み寄ることができるのかを考えるのがアタシの仕事だ。哀しみの花なんて二人にふさわしくない。


 ……しかし、アタシは一体何に転生したのだろうか?


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人生二週目と転生失敗 猫乃助 @nekonosuke

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