第2話

「うん!確かに旨い。これは日本特有の麦酒がより輝けるな」


 特にこのたこの唐揚げ、からっからに揚がっていてアッツアツ、大きく安い。そんでもって量も有るってんだから財布に優しい。財布に優しいは世界に優しい...と思う。要は大満足だ。


「一体どうしたんだよ、いきなり日本特有何て言っちゃってさぁ」


 なんと!この酒飲みは今自分が飲んでいる麦酒が日本人向けにできていると言うことも知らないのか!


「驚いたよ、知らないのか。良いか、日本特有って言うのはな、麦酒自体は紀元前から飲まれていたんだけどな、麦酒って言われて出てくる金色のはピルスナーと言ってチェコだったかでうまれた物なんだよ。まぁ黒いラガーはドイツだったり、要は現代で飲まれているのは西洋で生まれたんだ。ここまでついてきてね?」


「うーん、ごめん。金色で止まってる」


「まぁ続けると、本場チェコやドイツでは麦酒っていうのは3℃~8℃位で飲まれるのが基本なんだ。だけど日本の場合、のど越し重視に開発されていって「氷点下!!」を売りにするぐらいで本場からみると変わっていると言えるんだ.........。酔ってないのにふらふらしちゃったか。続きはまた今度にしよう」


 ふらふらふらふらふらふらしながら元アッツアツのたこの唐揚げを口に放り込み良くわかってない軽くぬるーくなった麦酒を流し込む酒飲みが目の前にいた。飲むのを楽しまなきゃいけなかったか。反省点。


「おーい、麦酒もう一杯頼むか?」


「おう、ようやく終わったか。当たり前だい、すみませーん!生二つ!」

 *

 ちまちまとししゃもを食べて自分からしゃべることはせず居る私に酒豪は会社の愚痴をぶつけてきます。給料が少ないっていう話題からそれずに良く長く話せるなあ、と半分呆れてました。

 そんな話を緑茶割りのように流していると前の席の会社員らしき男性二人がたこの唐揚げを美味しそうに食べて麦酒を飲んでいるのがとても楽しそうに見えます。良いなぁ、あんな人たちとなら飲んでみたいなぁ。そう思いながら冷奴に箸を進めるのでした。


 向かいの酒豪がこっちを睨んでいますけどどうしたのでしょうか?


「何でにやけてるのよ、人が不幸そうにしているのが面白かった?えっ!」


 まずい!だいぶ酔ってきてます最早ここまでくるとだれかれ構わず八つ当たり状態になってしまいます!それだけは避けないと......。


「いえいえ、お酒は久々飲むと美味しいなあと思って...へへ」


 余計ムスっとした顔になってます!駄目だ今なら人怒らせる達人になった気がします。


「なるほど、なるほど私の話なんてまともに聞いてないと、そういっているわけだね。よほど度胸があることはよぉぉくわかったよ。勝負しましょう。飲み比べよ、負けた方が全部払うの、良いね」


 うぅ、酔っぱらっているのに飲み比べですか驚きます。ここは勝っちゃいけないのか知らないよう。だけど、断れない。


「少ししか飲めないのですけど」


「いいや、逃がさないわよ」


「わかりました。受けてたちましょう、そして私が勝ちます!」


「ならよし。すみませーん、焼酎を五杯づつくださーい」

                    *

「はぁ、どれだけ飲んだら気がすむんだ」


「良いだろ、さっきは長々と話してくれたんだからよ」


 良く飲むなと呆れていたら前の席から焼酎を五杯づつなんて声が聞こえてきて上には上が居るなって考えて麦酒と蓮根を食べて過ごした。


 ふと酒豪は話しかけてきた。


「後ろでさあ焼酎飲み比べしてんだけど...」


「あぁ、さっき聞こえたよ。今何杯ぐらいだとおもう?」


 少し狭い店内、飲み比べに夢中になっているなら覗いてみても気づかれない。


「そうだな...九杯目を...飲みきったとこだな。おぉすごい」


 九杯!酒なんて並みほどしか飲めないから恐ろしく思えてくる。


「仕事のストレス発散なの...か」


「さぁな。酒飲みってことに違いはないけど」


 時計を確認してみた。なんと、飲みはじめてからもう二時間半たっていた。少し飲みすぎたか。


「そろそろお開きにしないか?明日は...ほら、なんかあったじゃん」


「ん~、なんかあったっけ?まぁちょっと飲みすぎたな、んじゃお開きってことで」


 店を出るとき飲み合いしてた席を見てみて驚いた。空になったグラスがところ狭しと並んでいた。


 雨はすっかり上がりアスファルトは町の明かりできらきらとネオンを反射させ輝いている。


「おいおい、そんなにふらついて帰れるのか?駅までなら肩貸すぞ」


 赤くなった顔で俺を見て申し訳なさそうな顔をしてこう言った


「駅までじゃ無くさぁ、いっそ家まで送ってよぉ」

                   *

「いやですよ」


 何で飲み合いに勝ったのに私が飲んだ分を払わないといけないんです?勝負分ぐらい払ってくれたっていいじゃないですか。仕掛けてきたのはそっちだし...。


「まぁ、勝負に負けちゃたのは事実だしねぇ~。うぅ~ん、わかったわ払いましょう。それにしても久々こんなに飲んだわぁ」


 あぁ、飲みすぎちゃった。少し飲んだら降参するつもりが酔いつぶれさせてしまうとは、実は飲めるなんてわかったら次もまた呼ばれちゃうじゃないですか。でも、もしかしたらこいつとは飲まない方がいいって思ってもらえたはず...です。


「大丈夫ですか?駅まで支えてますよ」


「あぁ、ありがとぉ。明日は二日酔いになるのかなぁ~。は、はは」


「受付の仕事は二日酔いじゃ務まりませんからなんかしら飲んでくださいね」


 実は飲めるのに私と飲み合える人が居ないから居酒屋なんていかないのに。誰かないのかな。













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