嘘吐きは月に許しを乞う

柚希藍璃

ゼロ話

月が綺麗な夜だった、僕はいつも通りスマホに目を向けていると一通の通知が目に入った。

…大切な友人からの通知だ。

(今夜は月が綺麗に見えるらしいよ!俺も見ようかな〜)などといった

心底どうでもいい文名だ、僕はそのメールを無視しようかと思ったが流石に

可哀想なので僕も見てるよ、

とだけ返信し、通知をoffにした。

僕はその友人を大切に思っている、友情的な意味ではない……

恋愛対象としてみてしまっている、

それに気がついた時は心底自分に呆れたよ

……僕はその愛しい人に

嘘をつき続けている。

今も、これからも偽らなければならない、

だってその子は幸せにならなければいけないんだ、僕みたいな枷は邪魔でしかならない。

…もし許してくれるのならこんな友人で

すまない、今夜だけでいいから

ひと時で構わないから愛してると

言わせて欲しい

そんな叶いもしない願いを胸に抱き

美しく怪しい光を放つ月に許しを乞うかのように、嗚咽を漏らした。

【クソッタレが】もし願いが叶うなら、

こんな世界消えてしまえ

そんな子供みたいなことを考えながら、

机上に放置されたぬるくなった珈琲を飲み

淡く光る月を堪能し、

また資料に手をつけた。

【本当の自分なんて自分自身が知ってれば問題ないよな】

そんなセリフを吐き捨て、終わる気がしない資料を眺めていた。

あぁ、せめてこの美しい月が僕のことを

許してはくれないか。

僕は意味の無い感情を心の隅に放り投げた。

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嘘吐きは月に許しを乞う 柚希藍璃 @hiyokomochiaiai

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