第79話

あの出来事の後は何事も無く楽しく過ごして、今の家に帰る時になった。


「じゃあまた年末に」

「ちゃんと帰ってくるのよ」


 母さんはそう言って手を振ってくる。


「あれそれだけ? ここを出る時はめちゃくちゃ心配してたのに」

「前は心配しかなかったのよね」

「そんなこと無いと思うけど……」


 俺はちゃんと否定したが、母さんはそれを無視して「でも」と付け加えた。


「今は安心出来るのよね。改めて見てそう思った」

「そんなもんなの?」

「まぁ、今は分からなくても、いずれ分かる時が来るわよ」

「ふうん」


 そういうもんなんだな。俺にはまだ分からないけど。


「それじゃあ」

「バイバイお兄ちゃん!」

「ああ、寧々も短い間だったけどお世話になったな」

「なにそれ。またすぐ会えるでしょ」

「当たり前だ」


 その言葉を最後にこの家を後にした。


 結衣も結衣でお母さんといろいろ話すと言うことなので、近くの公園で待ち合わせすることになっている。


「本当に色々あったな……」


 高校に入ってから色々あった。でもそれは楽しいことや結果的には良いことばかりだった。


「これからはもっと楽しい生活が待っているといいな」


 そう呟くと同時に「けいくーん!」と俺を呼ぶ声が聞こえてきた。


「お、結衣、来たか!」

「じゃあけいくん行こー!」


 結衣に手を取られて俺たちは向かった。俺と結衣が住んでいる家へと。


 楽しい事も悲しいこともたくさんあるかもしれない。でも、結衣と一緒なら何でも乗り越えれるはずだ。そう信じている。



***



 家に帰ってきて次の日。聡太と有紗さんと遊ぶ予定の日だ。


「あなたたちこの短い間で何か変わった?」

「そう?」

「そうだって。何か自信に満ち溢れてる」

「お前にまで言われるなんて。これはもう色々大丈夫だろうな」


 俺は安心しきってそう言った。


「どう言う事だよ」

「俺はいい親友を持ったなって」

「何言ってんだよ。いきなり」

「私もだよ。有紗ちゃん!」

「恥ずかしいって。本当にどうしたの?」


 俺と結衣の言葉に恥ずかしそうにする二人。確かに変かもしれないけど言っておきたかった事だからな。


「ありがとな。それでこれからもよろしく」

「それは言われるまでも無いぞ」

「そうね。二人見てると楽しいし。やっぱり何かおかしいわよ」


 肯定しながらも様子を心配している聡太と有紗さん。


「もちろん結衣もよろしくだからな」


 忘れないように俺は結衣の頭を撫でてそう言った。


「もう! 恥ずかしいって」


 結衣は恥ずかしそうに、俺をペチペチと叩いてくる。全然痛く無いし、むしろ微笑ましい。

 その姿を見た聡太が


「やっぱり何にも変わらないな。この二人」


 と言い、


「そうな。私たちの気のせいだったかも」


 有紗さんも便乗してきた。


「何だよそれ!」

「本当だよー!」


 俺たちはそう言いながらも笑いあった。いつまでもずっと。

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幼馴染との同居生活 鳴子 @byMOZUKU

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