さいしゅうわ

『夢みたものは……』立原道造

『夢みたものは ひとつの幸福

ねがつたものは ひとつの愛

山なみのあちらにも しづかな村がある

明るい日曜日の 靑い空がある


日傘をさした 田舎の娘らが

着かざつて 唄をうたつてゐる

大きなまるい輪をかいて

田舎の娘らが 踊ををどつてゐる


告げてうたつているのは

靑い翼の一羽の 小鳥

低い枝で うたつてゐる

夢みたものは ひとつの愛

ねがつたものは ひとつの幸福

それらはすべてここにある と』

彼女が一番好きだと言っていた詩。それを図書館で借り、台風の中、僕は家でこの詩をよんだ。

あの塔には行かない。もう、二度と。彼女がいないのだから。

潮風の吹くバス停が僕らの全てだった。そこには、色も光もなかった。ただ、君がいるだけだった。

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この小説のタイトルは長いのでとりあえず「潮バス」にしておく 鶴狐 @turugitune

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