<閑話>大木ひなたという存在と犬飼春彦
<ひなたside>
私は、大木ひなた。
生徒会所属の書記を担当しているが、周りでは次期生徒会長とも囁かれているけど、私は正直を言えばあまり興味はなかった……けど、それは建前。
何故なら、今の生徒会長は女性に必要な物をすべてを持っていて、私なんかが生徒会長になっても華になる訳がない。
私は、自分の容姿に自信がないのだが生徒会長でもある凛子先輩は『あなたみたいな可愛い子が生徒会長になったらいいのに』と最近よく口にする。
もうすぐ、凛子先輩の任期が終わり選挙が始まるので、凛子先輩は私が会長になることを望んでいるようだった。勿論、悠里先輩も……
この流れは、確実に私に生徒会長になれという無言の圧力だと感じた。
けど、私には密かに生徒会長になるという野望を持っていた。
別に権力が欲しい訳ではない、凛子先輩みたいになりたいという気持ちだってあるけども……
では、どうして私が生徒会長になりたいかと言うと、ある想いがあったからで生徒会長となれば、何かと融通が利くから。あれ、結局は権力……だね……はは。
私には密かにいいなって思う人がいて、これが恋愛感情かどうかは分からなかったけど、最近になって思い人の周りに女子が増えて、しかもその中の一人が雰囲気が彼女のような感じがして、モヤモヤすることが多くなった。
きっと、これが初恋なんだって気づいた。私はあの人に恋をしたんだと。
最初は、去年から同じクラスって言うだけの存在だったが、凛子先輩が『ハルがね』ってデフォルトになってるので、いつかは分からないが目で追うようになっていた。
彼の名は、犬飼春彦君。
1年生の時のそうだけど、テストでは常に上位をキープしていたが、不思議なことに4位という微妙な位置にいた。1年間ずっと……なんで?って思うよね普通。
その理由は、少しすると解るのだが……それを知った瞬間に私は後悔した。
そして、犬飼君の周りには1年の時から仲がいい2人がいる。
綾瀬秋織君に東山冬姫さん、誰が見ても美男美女のカップルである。
聞くところによれば、あの2人を恋仲にしたのは犬飼君らしく、2人は犬飼君に感謝もしていて今でも相変わらず仲で、3人だけのLAMグループが存在していた。
密かにそのグループに入れたらなって思っていると『お前らのところ、あと一人いたら面白いのにな』って言ってるのが聞こえたが、それは人の問題ではなかったのだ。
3人が求めているのは『夏』が付く人物らしいが、3人の意見が一致しないことには『夏』が入っていても入れないということ。
最終的な決定権は、犬飼君が持っていると。
だが、5月になると私にとってある出来事が発生する。
それは、うちのクラスに転校生が入ってきて、入ってきた途端にその子は犬飼君を見るなり『昨日、猫ちゃん拾ってくれた人だー』と言った。
この時、私の心臓がドクンって跳ねるような鼓動を感じたが、気のせいと思うことにした。
だが、後に気付くのはあの時の鼓動は彼女……紫季夏美さんに対しての警告のような鼓動だったと。
案の定、彼女は犬飼君達のグループに入ることになる。ズルいなって思ってしまう私って嫌な子だなって自己嫌悪していた。
その後も、紫季さんが来てからの犬飼君を取り巻く環境が大きく変化して行くのは誰でも分かる事で、同じクラスの鈴木君が突っかかったり、新聞部の不始末で2人のデート?の写真まで晒される始末。
私と犬飼君の距離が変わったのは、林間学校だった。
くじ引きで犬飼君と行くことになって私は少し安堵していたところに、非公式新聞部がとんでもないことをやらかしてくれて、私は仕掛けた物に驚いて犬飼君を置いて行ってしまった。
肝試しをする前に犬飼の情報を聞いていたのに、犬飼君を一人にしてしまい、私が戻った頃には紫季さんが犬飼君に寄り添っていた。
その時、私の胸はズキンと痛む感覚を覚え、この時を機に彼女を勝手にライバルに認定していた。
後日、お見舞いも兼ねて犬飼君の家に行くと可愛らしい白い子猫が犬飼君と紫季さんを行き来しながら、最終的に犬飼君の膝元に収まっていた。
これを見て、以前に噂になっていた『子供』というフレーズの意味を理解することが出来たけど、何故か胸が痛かった。
だから、私はこの日を境に決めた。
犬飼君を手に入れようと。
たとえ、敵がどんなに強大でも怯まずに行こうと。
その為には、私は地位を手に入れて犬飼君の隣に相応しい人間なんだと周囲に分からせるためにも、生徒会長にならないといけないのだから。
私は、紫季さんに絶対に勝ってみせる。
そして、今日は憧れの凛子先輩とのショッピングなのだ。
しかし、このショッピングであの場面を見るとは思わなかった。
猫とラブコメは突然に カズハル @kazuhal
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