第二十八話 大会(2)

【大会(2)】


俺達はDフィールドのモニターを見ていた。

六ステージのチーム対三ステージのチームの試合だ。

そして、その六ステージのチームにはロキがいた。

手や地面から鎖を出して暴れるロキに、相手チームは全く近づけない。

最終的にはロキの仲間の蹴りが決まり試合は終わった。

「調子は悪くなかったぜ。」

フィールドから出てきたロキはすぐに俺達の方に来てそう言った。

「鎖を操る能力?」

真っ先にそう聞いたのはアランだった。

「ああそうだぜ、鎖を自由自在に扱って敵をシバく能力!」

ロキは手から実際に鎖を出してそう言う。

モニター越しで見ていたときよりかなり太く感じた。

「太いな。」

「それに結構重いよ。」

アランも鎖を持ってそう教えてくれる。

「はいはいそれぐらい、後は試合でのお楽しみな!」

ロキはそう言って鎖を消してしまう。

「功善の能力も知っちまったからな、これで五分だ!」

俺の能力は初見殺しみたいな要素がかなり強いから、知られているとなるとかなり戦いづらいな。

「じゃあ、準々決勝で会おうか。」

そう言うとロキは仲間を連れてどこかへ行ってしまった。

「あの重さの鎖をブンブン振り回してたよね、確かに強いよ。」

「そういえば、あれからロキさんのことを調べましたけど、レベルは8500でしたよ。」

レフィアがそう教えてくれる。

というか、レベルってどこで知ることが出来るんだろうか。

先日も魔王様が俺のレベルを教えてくれたけどな。

「8500か、僕より3500も上だよ。」

「私も似たよなものですね。」

8500っていうと、ギンと同じくらいってことか?

そんな奴に勝てる気がしない。

「賞品は四位まであるらしいから、ロキに勝てたら確定するんだが、厳しいな。」

他のチームの試合を見ていてもロキ以上のインパクトのあるやつは今のところいない。

トーナメントの上側のチームにはいるのかもしれないが。

「とりあえず次も勝って準々決勝まで行こう。」

「そうですね。油断しなければ次の相手も問題ないと思います。」

レフィアもそう言い俺達は次のフィールドへと向かう。


そして二回戦の試合は、アランの能力をロキに見せないためにレフィアが力を出して戦ってくれた。

タミスという選手の針を飛ばす能力に多少苦戦したが、特に危なげなく勝利した。

そして、同時刻に試合をしていたロキも勝ち上がって来ていた。

「さあ次ですね、僕本気出しますよ!」

ストレッチをしながらアランが言う。

身体能力を倍にする力の反動を少しでも抑える為らしい。

「頼むわ、かなりアラン頼りになると思う。」

俺にあの鎖を見極める自信は無い。

どうにかロキ以外の選手を引きつけてアランへの負担を減らしてやりたい。

俺にはそれくらいしかできないが、それすらもちゃんと出来るかは怪しいところだな。


そして、試合の時間になった。

「本気で行くからな!」

受け付けを終えフィールドに向かう途中でロキにそう言われる。

「俺は常に本気だ、俺の仲間の本気に気を付けろよ。」

俺はそう返して待機ラインに立つ。

「よし、準備万端!」

アランもそう言って俺の横に立った。

レフィアはいつも通り落ち着いた状態で前を見ている。

「勝つぞ!」

俺がそう言った瞬間、

ファーーーーン!

試合開始の合図が鳴った。

フィールドは一軒家が並ぶ村のような場所だった。

俺達はそれぞれバラバラで行動する。

俺は右側から回り、敵一人を誘うようにする。

すると、敵一人が俺と同じように外側から回って来ており、そいつと対面する。

向こうも俺に気付いて足を緩め圧体を使った。

一目で分かるほど俺とはレベルの違う圧だ。

全身が完全に赤くなっており、その濃さも俺とは全然違っていた。

すると、相手は正面から俺目指して走って来た。

かなり速いが、カムイよりは遅い。

今まで動きが速い奴を多く見てきたおかげで、相手を追えるようになっていた。

だが、圧の威力は完全に負けていた。

相手の蹴りを左手で圧芯を使いガードするが、一瞬で飛ばされてしまう。

「くそっ、」

痛みはそこまで無かったが、立ち上がっている間にも相手はもうこっちに向かって来ていた。

そして次の攻撃にガードが間に合わなかった。

「ぐはっ!!」

脇腹にパンチを喰らい更に吹っ飛ばされる。

また走って来てるであろう方向に向けて倒れながら竜巻を飛ばす。

しかし、相手も反応しそれを躱された。

だが一旦距離は取ることが出来た。

ロキばかりに注目していたが、他の仲間も弱い筈が無かったな。

このままやっても俺が負けて終わってしまうだろう。

そう思い、俺は空気を飛ばしながら後退する。

相手が追ってくる気配はなかった。

「はぁ・・・つえーな。」

改めてまだまだ自分が弱いことを知る。

だが攻撃に反応はできていた。

自分で判断し、やられる前に下がってくる事もできた。

多少は俺も成長しているってことだろうか。

そして次は真ん中から前へ進みアランを追う。

すると、

キン!!ということが何回も聞こえて来た。

ゆっくり近付きながら見てみると、アランとロキが一対一で戦っていた。

アランは能力を使用し、凄いスピードでロキに近づこうとするが、どこからともなく出てくる鎖に反応出来ず弾き飛ばされていた。

そして俺は異様なことに気付いた。

鎖が赤く光っているのだ。

それに気づいた瞬間、

バコン!と家の壁を突き破ってアランが俺の方へと飛ばされてきた。

「はぁ、はぁ、すみません。一人じゃ無理かもです。」

アランは俺に気付くとそう言った。

それほどに強い相手なのだろう。

「これは三対三だぜ!全員で戦おうじゃねえか!」

ロキはそう叫びながらこっちに鎖を叩きつける。

俺とアランは咄嗟に家から出て身を隠した。

鎖は天井を壊し、さっきまで俺がいた場所まで壊していた。

「あぶねっ。」

俺は更にもう少し後ろに下がり体勢を整える。

すると後ろからレフィアが走ってきた。

「一対一で戦っていたのですが、相手が突然中央に行ってしまったので私もこっちに来ました。」

レフィアはそう言ってロキの方を見る。

するとさっき俺が戦っていた相手も合わせて三人で中央に立っていた。

「これは、そういうことか?」

俺がレフィアに聞くと静かに頷く。

つまり六人が同時に同じ場所で乱戦するということ。

最も一対一で戦いたそうなアランも一人じゃ厳しいと言ってたんだ。

これはやるしかないだろう。

レフィアと並びロキ達の方へ歩いていくとアランと合流する。

「お互い、その場その場で助け合って戦いましょ。」

アランも冷静にそう言い俺達に並ぶ。

「お、来たな!もう逃げんなよ!いくぞ!」

ロキがそう言った瞬間、残り二人と一本の鎖が飛んでくる。

俺とレフィアはそれぞれ相手の攻撃を躱して後ろに下がる。

だがアランはその鎖を掴んで受け止めていた。

「上等だぁ!」





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