第二十七話 大会(1)

【大会(1)】


大会当日になった。

今まででは見たことのない数の人が、チャレンジタワーの入り口に集まったいた。

「これ全部大会挑戦者?多過ぎない?」

アランが呆れたようにそう呟く。

「ここには全ステージの人が集まってますからね。けど予想を遥かに超える多さです。」

レフィアも驚いたようにそう言っている。

しばらく待っているとようやく俺達に受付の順番が回った来た。

「今日はリーグ戦を中断して、大会を開催します。

ご存知ですか?」

受付の女性がそう聞いてくる。

「はい、知ってます。」

リーグ戦が中断されているのは知らなかったが、目的は大会なのでなんの問題も無い。

「では大会に参加ということで宜しいですね。チャレンジタワーのリーグ戦に参加されたことはありますか?」

「はい、ツーステージのリーグに参加中です。」

俺達は三日間ワンステージで全勝し、見事にツーステージに昇格したばかりだった。

「分かりました、では登録させて頂くので三名の名前とチーム名を教えてもらっても宜しいですか?」

「クゼンとアランとレフィアだ、チーム名は魔王軍でいいよ。」

自分でそう名乗るのは少し恥ずかしい気もするが、二人はなんともなさそうなので大丈夫だろう。

「ありがとうございます、では左から四番目のドアにお入り下さい。」

そう言われ俺達はドアに入る。

そこはほとんどワンステージと変わることのない場所だった。

「やっぱり変わらないんだね。」

アランもそう言い辺りを見渡す。

そして後ろからどんどん参加者が入ってきて、俺達は建物の中央に集まった。

「今日は大会に参加してくれてありがとうございます。私はチャレンジタワー副管理長のデュークです。」

すると中央に立っていた男性がそう自己紹介した。

「ここにはワンステージからセブンステージ、そして今日初めて参加した方々に集まって貰っています。対戦表はモニターに映すので確認して下さい。」

男性がそう言うと、一番大きなモニターにトーナメント表なようなものが映された。

上と下から伸びているその表には六十四チームの名が書かれていた。

俺達魔王軍は下のブロックの右の方にいた。

「では早速始めていくので、放送を聞いてそれぞれのフィールドへ向かって下さい。」

男性はそれだけ言うとどこかへ行ってしまった。

「なんか盛り上がらないねー。」

アランがそう言ってしまうのも無理はない。

こういう大会を仕切っていくやつは大概盛り上げようとするものだが。

「試合が始まればきっと盛り上がるでしょう。せっかくですし、私達も試合の様子を見学しませんか?」

「そうだな、セブンステージのやつの実力とかも見てみたいしな。」

そうして俺達はモニターを試合を観戦をすることにした。


大会を観戦していて俺が思ったことは一つだけだ。

全然レベルが高くない。

最初の三ステージのチーム同士の試合も、今観ている四ステージ対二ステージの試合も、どちらも驚くほどに大したことは無かった。

いや、流石に四ステージチームのリーダー格となると、圧と能力を上手く使って相手を圧倒していた。

だがそれでもアランやレフィアの足元にも及ばないだろう。

今まで強い敵と戦い過ぎたか、アランとレフィアと一緒にいすぎて強さを忘れていたか、どっちもあるだろうが俺達はかなり強い方のかもしれない。

魔王軍幹部という強さを改めた方がいいな。

そして俺達の番になるまでに五ステージ以上のチームが出てくることはなかった。

「Dフィールドの次の試合は、魔王軍対リッター、各チームは準備を始めて下さい。」

放送がかかり俺達はDフィールドに向かった。

そこにはリッターの人達が既に待っていた。

「見たことないやつらだな。所詮はツーステージの雑魚だもんな。」

いきなりそう煽られてつい笑ってしまう。

「そちらは何ステージの方なんですか?」

多少笑いながら言ってしまったが、特に馬鹿にしている訳ではない。

「俺達は四ステージさ。精々頑張ってくれよ?」

真ん中にいる男がそう言ってくる。

「なんだ四ステージか、相手になんないよ。」

アランはしっかりと馬鹿にしながらそう口にした。

「なんだと?」

まあ当然こうなる。

しかし受け付けの人に呼ばれ俺達は先にフィールドへ入って行く。

「うわー、超シンプル。」

アランが驚きながらそう言う。

そこは縦、横、高さとも五十メートルくらいの鉄で出来た立方体だった。

「本当に実力が試されるようなフィールドですね。」

「まあこっちの方が分かりやすくていいな。」

俺達がそんな風に話していると、相手チームも入ってきた。

「お前らモニター見てなかったのか?順番的に俺達がDフィールドで試合することは分かった筈だけどなー。」

「そんなことも分からないからツーステージ止まりなんだよ!」

どうやら俺達の会話が聞こえてたらしく、いきなりそんなことを言われた。

「お前らこそ、それだけ入念に準備しておいて一瞬で終わんなよ?」

今度こそ俺は挑発するようにそう言った。

「ほー、ならお前から潰してやるよ!」

そう言って相手は俺達とは反対側へ歩いて行く。

「じゃあ僕達何もしないんで、やっちゃってくれていいですよ!」

とアランが急にそんなことを言ってくる。

「ルールはいつものリーグ戦と同じですしね。功善さんの挑発にまんまと掛かったあいつをさっさと倒して終わりましょう。」

レフィアも笑いながらアランの意見に乗っかってくる。

「そうだな、やってやるか。」

俺はリージやカムイ、そいつらを超える殺し屋やイザナギを目の当たりし、自分はとても弱いのだと思った。

だが、あいつらがトップクラスで強かっただけで、俺が弱いなんてことは無かったのかもしれない。

ファーーーン!

サイレンのようなものが鳴り試合が始まる。

アランとレフィアは俺から離れ相手を誘い出すような配置に着いた。

「ぶっ潰してやるよ!」

すると先程俺の挑発に掛かった奴が速攻で突っ込んで来た。

確かに俺よりは圧芯の練度は高く、かなりのスピードで走って来た。

だが、

「消えろ!」

俺は右手を突き出し竜巻を飛ばす。

「風か?」

いきなりの攻撃に相手は躱そうとするが、足の先端が少し当たり俺の右手に吸い込まれていった。

「シアン!」

残りの相手が突然消えた仲間の名を呼び、進路を変えてこっちに向かって来た。

だが俺はそいつらを無視し、後ろにある壁に向かって空気とシアンと呼ばれている相手を飛ばした。

バン!!!!

大きな音と共に壁に打ち付けられたシアンが地面に転がる。

腕は変な方向に曲がっており、頭からは大量の血が流れていた。

ファーーーン!

再びサイレンが鳴り試合が終了する。

なんなく初戦に勝利し、俺は二人の方を見る。

「貴様ぁ!」

しかしそこでシアンの仲間が突っ込んで来た。

完全に油断していた俺は反応が遅れ殴られる、と思ったがそいつはアランのパンチを喰らい吹っ飛んで行く。

「残念でしたー。」

アランはそう言って舌を出しながらフィールドを出て行く。

「流石でしたね功善さん!」

後から来たレフィアは笑顔で称賛してくれた。

「でも危なかったよ。あとちょっとで躱されるところだった。」

危なかっていうのは本音だ。

あのスピードで走って来ておいて、いきなり真横に回避なんて出来るものだろうか。

「やっぱり凄い奴はいっぱいいるな。流石にちょっと調子乗り過ぎてたよ。」

試合前は楽勝なんて思っていたが、一度ここで気持ちを入れ替えられて良かった。

「ですが、ここから相手が強くなっていくのは確かですね。油断せず行きましょう。」

「そうだな。」

俺達はそんな事を話しながらアランに続いてフィールドを出た。

「よお功善!お前らも出てたんだな!」

すると、そこにはロキがいた。





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