有涯

 次の日。少年と少女は、船に乗せられ、島へ流された。少年は未だに何故壊れたのか疑問に思っていた。少女は泣いていた。


 2020年夏、あれから5年が経った。舟を壊した犯人が見つかり、二人は舟で町へ帰っていた。

「僕のせいで…ごめんね。」

「君は悪くないんだから、謝らないで。」

 少女はやっと帰れることに喜びを感じていた。それと同時に、犯人への苛立ちも感じていた。少年は、自分の作った舟が失敗していなかったことに喜びを感じていた。

 するとその時だった。急に風が強くなり、雷雨に見舞われた。

「すごい雨…ねぇ、私達帰れるかな…?」

 少女は不安な表情を浮かべて言った。だが、少年は楽しげな表情だった。

「なんでそんなに楽しそうなの?私達、危ない状況なんだよ?なんでそんなに呑気なの?」

 少女は疑問に思いつつも、少年に苛立ちを感じた。

 すると少年は笑った。

 そして、その笑みが天に届いたかのように、雷雨は晴天へと一変した。少女は、少年を不思議に思うばかりだった。その後、二人は無事に町へと帰るのであった。


 ある人は言った。


 「船に乗っても、もう波が出やしないか、嵐になりゃしないか、それとも、この船が沈没しやしないかと、船のことばかり考えていたら、船旅の愉快さは何もなかろうじゃないか。人生もまたしかりだよ。」


 限りのある一生を幸せに過ごすことは、難しいことかもしれない。けれど、少しの工夫によって、少しだけ人生を豊かにすることはできそうだ。

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有涯 人鳥パンダ @kazukaru

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