真実と絶望

「大丈夫か?!」

 王様は側近にすぐさま助けるように言い、孫は救出された。孫に異常は無かったが、無論、王様はこれ以上ない怒りの表情を見せ、僕の元へ駆け寄った。

「こ、これはどういうことだ!貴様は何をしている!この小僧め!」

 王様は怒りをぶつけた。少年は、疑問に思っていた。なぜあれ程の自信作が壊れてしまったのか。いつもなら壊れることなんて無いのに。あれ程の自信作だったのに。

 少年が何も言わずに立ち尽くしていると、王様は何かを思いついた表情を浮かべ、言った。

「貴様は許せぬことをした。罰をくだそう。」

 少年の顔は青ざめた。この王様の罰は、恐ろしいものだと町の人々は知っていたからである。

「どうか、どうかお許し下さい。」

「黙れ!貴様はとんでもないことをした!よし、貴様には両親は居るか。」

 王様の質問を少年は肯定した。

「ならば貴様の両親を別の島へ流してやろう。貴様のような人間に育てた罰だ。」

 少年は驚いた。そして焦った。まさか自分ではなく両親に罰が与えられるとは思っていなかったからだ。

「そ、それはお辞めください…!せめて、せめて僕にしてください!」

 少年は、最後の頼みを込めて言った。

「ほう…貴様もそのような心を持っていたか。いいだろう。じゃあすぐに準備するんだな。」

 王様は嘲笑し、僕に言った。少年は安堵の表情を浮かべた後、すぐに悲しい気持ちになった。

 すると、後ろから誰かの声がした。

「お待ちください…!」

 少年は振り返った。そこには少年の幼馴染の少女がいた。

「舟が壊れた理由。王様は知っているのですか?」

 少女は王様に質問した。

「そんなの、この小僧が失敗したからに決まっておるだろ。だいたい、誰だ貴様は。」

 王様はまた怒りを顕にした。

「私は、この子の知り合いです。そして、この舟が壊れた理由を知っています。この舟は、壊れたのではなく、壊されたのです。」

 少女がそう言うと、少年と王様は驚きの表情を浮かべた。

「壊された?」

 王様は言った。

「壊された…」

 少年も言った。

「はい。私は、その舟が出来上がっていく様子を、見ていました。毎日だんだんと出来上がっていくのを見るのが習慣となっていました。そしてその舟が完成したのが昨日です。その昨日の夜。私は舟が見たくてこの子の家に見に行きました。するとそこには別の人影がありました。私はそれが誰なのか分からず、隠れて見ていました。するとその誰かは、舟の部品の一部を盗んでいったのです。そしてその舟は沈没してしまったのです。」

 少女は冷静にその真実を告げた。少年は、初めて聞いたその真実に、終始驚きの表情を浮かべていた。すると、王様は戸惑いながら言った。

「う、うるさい!それが嘘だってことは、分かっている!だいたい、その人影が誰だったかなんて、分からないんだろう!えい、お前も一緒に別の島へ流してやる!」

 少女は驚いた。こんなに暴虐な王様がいるだろうか。これは後に発覚したことだが、この町には少年ともう一人、舟大工がいた。その男は、少年より舟を作るのが下手で、町の評判も悪かった。そして、その舟大工が、少年の作った舟を壊したのだ。それも、見ただけでは分からない程度に。

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