有涯

人鳥パンダ

始まりと希望と失望

 その日も、ある少年と少女は舟に乗っていた。

「いつになったら着くの?」

「まぁまぁ、そんなに急ぐなって。」

 少年は、黙々と舟を漕いだ。

「なんでこうなっちゃたの…。」


 時は遡り、二人が町にいた頃。

「さてと、今日も舟を作ろう。」

 舟作りが趣味の少年は、今日も舟を作っていた。するとそこに、ある男の人が訪れた。

「ちょっといいかい…?」

 少年は、すぐさま声の方へと振り向いた。するとそこにはこの町の王様が立っていた。

「お、王様…!よくぞいらっしゃいました…!ご用件はなんでしょうか…?」

 突然の出来事に、少年はとても戸惑っていた。

「君…舟を作るのが得意なんだってな。」

 王様は少年に言った。そこそこの腕前がある少年は、この町でも名前を知っている者が多かった。

「あ、ありがとうございます!そう言って頂けて光栄です!」

 少年は、とても幸せな気持ちになった。

「そこでだ。君に、頼みたいことがあるんだ。もうすぐ、孫が誕生日を迎えるのだが、孫の誕生日に舟をプレゼントしてあげようと思うのだ。それを君に作ってもらおうじゃないか。」

 少年は心底驚いた。僕が舟を…?少年は心の中で言った。だが、この王様はこの町では絶対的な権力を持っていて、歯向かうのは到底できなかった。それに、断る理由も無かったので、

「はい。僕に任せてください。」

 と、王様に告げた。

 王様が笑顔を見せたので、僕は安堵した。


 次の日から、その舟作りは始まった。いつもより全ての工程に時間をかけて、丁寧に作っていく。幸い、与えられた制作時間はたっぷりとあったので、少年は最高傑作を作ってやろうと意気込んでいた。


 5日が経った。少年は、舟の大半を作り終えていた。普通なら、こんなに短時間で舟の大半を作るのは、難しいことだった。けれど少年は、寝る間も惜しんで、全ての時間を舟作りに注ぎ込んでいた。それだけ本気だったのだ。これは、少年がもっと世の中に認めてもらえるチャンスでもあったのだ。少年は、仕上げ作業に入った。


 あれから一週間が経った。ついにこの日は、王様の孫の誕生日であった。町中が、彼の誕生日を祝っている。少年は、朝早くから舟のチェックなどをして準備をしていた。その間、心臓の鼓動は高まっていた。

 そして、王様の孫の誕生日パーティーが始まった。パーティーは順調に進んでいった。そしてついに、最後のプレゼントを渡す時間となった。

「絶対に喜んでくれる物を用意した!」

 と、王様はハードルを上げた。だが僕はそんな物には怖じ気づかなかった。なぜなら、僕には自信があったからだ。僕の最高傑作ができたからだ。

「お孫さん。お誕生日おめでとうございます。こちらが、僕からの誕生日プレゼントです。」

 少年は、舟に掛かっている布を取った。

 するとそこには、ピカピカにみがかれた舟があった。

「わぁー!すごいすごい!ありがとう!」

 僕は喜んだ姿を見て、一先ず安心した。だがまだ終わっていない。喜んだ孫は、一目散にその舟へと走っていった。どうやらその舟で海を浮遊してみるようだった。

「気をつけろよー!」

 と、王様は叫んだが、孫の耳には届いていなかった。孫は舟に乗り込み、オールで漕ぎながら海を浮遊した。

町の人たちが、その光景を楽しそうに、一部は不安そうに眺める。するとその時だった。町の人たちの表情が一変した。

「わぁぁー!!」

 何かが崩れる音と共に、孫の悲鳴が聞こえてきた。何があったんだ、と海の方を見てみると、最悪の事態が起こっていた。

少年の自信作だった舟が壊れていたのだ。そして孫は海で溺れていた。

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