志望校に落ちて浪人中の赤井帆信が、予備校費を稼ぐために選んだのは派遣の清掃バイト。時給も良くて隙間時間に勉強もできるという理想的なバイトだ。問題はその勤務先が二回落ちた第一志望の大学だっただけで……。
自分が落ちた大学で繰り広げられる楽しげなキャンパスライフ。仕事中にそんなものを見せられ続け、うんざりしてた帆信だが、勤務中にあるトラブルに巻き込まれこの陰鬱な状況を逆手に取る発想を思いつく。こうした事故を人為的に起こしてやればいいのではないか、と……。
わかりやすくしんどそうな設定で読者を惹きつけ、そこから人が足を踏み外していく姿を描く本作品。最初は軽いイタズラ程度だったのがどんどんエスカレートしていき、後戻りできなくなっていく心理を生々しく描いている。一度読んだら一気に最後まで読んでしまうこと必至。それでいてラストには思わぬ真実が明かされたりもして、エンターテインメント性も備えた作品だ。
(「色んなアルバイト」4選/文=柿崎 憲)
赤井帆信は志望校に二度落ち、それでも諦めない浪人生。
学費のために働くバイト先は何の因果か二度も落ちた憧れの白木学院大学。
うっ憤ばらしに始めたイタズラは稀乃という女性と出会ったことにより意外な方向へ……。
話の前半部分はひたすら主人公のダメっぷりが強調されています。
このままのテイストで行くかと思いきや、終盤は見事にやられました。
ピカレスク? クライムノベル? ミステリー?
この物語をなんと表現したらよいのかわかりません。
確かな伏線回収と巧みなストーリー展開。
とはいえ登場人物も必要最低限しか登場せずグイグイと読ませます。
終盤の驚きを皆様と分かち合いたいので、ぜひご一読を。