【最終話】:新たなる復讐へ

 女神の使徒ダークスとの戦いから、日が経つ。

 ボクは勇者候補ラインとして、前と同じようにミナエルで学園生活を送っていた。


「それでは、これより授業を始めるわ」


「「「はい、ライザール先生!」」」


 今日も魔法の授業を受けていた。担当は“レイチェル=ライザールの姿をした存在”だ。


 あれは前回と同じ様にベルフェの魔道人形。

 ボクの特殊能力の【性質創造リ・クリエイト】も併せて発動。魔道人形を“レイチェル=ライザールそのもの”に変質させたものだ。


 今までの記憶を有して、戦闘能力もほとんどレイチェル=ライザールと同じ。勇者同士でも気がつかないコピー体だ。


 今回も性格は、ボクの方で改造していた。特にやつの裏の顔……狂気の研究者な性質は全て消去している。


 あとレイチェル=ライザールの研究室の痕跡も、物理的に消去。洗脳状態にあった生徒も、今は記憶を消して解放済みだ。


 そのため今のレイチェル=ライザールは普通の女教師として、毎日を送っている。

 性格は前と同じく高飛車だが、他人は害を与えないようにプログラムしている。今後は誰にも怪しまれることなく、ミナエル学園で仕事をしていくだろう。


 ◇


 授業が終わり休み時間になる。同じクラスの《嫉妬しっとのレヴィ》が、声をかけてきた。


「そういえばライン様、“今度”はどうする予定ですか?」


 周りに聞かれないように、今度の復讐計画について話し合う。ちなみ《怠惰たいだのベルフェ》の本体は、しばらくは自室で休暇中。

『先日の第二地獄で働き過ぎたので、怠惰を回復するために休みます』というヤツらしい理由だ。


「“今後”か……そうだな。もう、このミナエル学園には用はない」


 ミナエル学園にいた勇者はバーナード=ナックルとレイチェル=ライザールの二人だけ。


 情報によると残りの四人は、別の街の勇者学園で教師をしている。つまりミナエル学園に留まる必要はないのだ。


「それなら他の学園に潜入するのですか、ライン様は?」

「ああ、そうだ。だがいきなり“勇者候補ライン”が姿を消したら怪しまれる。その為の“種まき”も済んでいる。ほら、ちょうどきたぞ」


 こちらに近づいてくる教師がいた。学年主任の男性教師だ。レヴィとの会話を中断する。


「ライン君。先日の“王都学園への短期留学の話”だが、考えてくれたかな?」

「はい。ありがたく受けさせていただきます!」

「そうか。それなら先方にも連絡をしておきますね」


 ――――これが“勇者候補ライン”の経歴を消さずに、他の学園に怪しまれずに潜入する方法だ。


 作戦としてボクは特別留学生として、王都にある“王都勇者学園”に、短期留学することしにした。

 もちろんこれは偶然ではなく、ボクが狙って選ばれたもの。


 短期留学制度は前から情報を仕入れていた。留学者の資格は、各学年で成績優秀者が一名だけ。


 ミナエル学園の一回生で、ボクの座学の成績は常にトップクラス。

 また選抜戦でも優勝していたから、文句なしに特別留学生の資格を獲得。学年主任に以前から申請していたのだ。


「さて。留学の準備をするか」


 ――――そして数日が過ぎ、王都学園に出発する日がやってきた。


 ◇


 王都学園に出発する当日となる。


 だが特にミナエル学園として、特別な見送り式などはない。

 勇者学園の本分は、“真の勇者”を育成することであり、友情を楽しむ学園ではないのだ。


「さて、王都に向かうとするか」


 自室で準備を終えて、学生寮から出ていく。

 短期留学ということで、名目上はまた戻ってくる。荷物も最低限必要な物だけ持っていき、他は部屋に置いていく。


「また、戻って来る……か」


 実際のところはどうなのだろう。

 六人の全ての勇者への復讐が終わったら、勇者候補を続ける理由は一つもない。

 もう二度とミナエル学園に、この部屋に戻らない可能性もあるのだ。


「そう考えると、少しだけ寂しいかもな。人の感情的には……」


 学園の敷地内を歩きながら、ふと感慨深くなる。


 ミナエル学園は自分にとって、生まれて初めての学び舎。母さんが惨殺されて後は、魔界で地獄のような数年間を過ごしていた。

 だからミカエル学園は久しぶりに、“人らしい生活”をした安息の場なのだ。


「まぁ。それでも色々と“濃い”期間だったな、ここも」


 ミナエル学園の校舎を横目にしながら、入学した当時を思い出す。


「まずはバーナード=ナックルか……」


 最初のターゲットである《剣帝》バーナード=ナックルは、初対面からゲスな教師だった。

 ヤツは新入生の女生徒の肉体が大好きな、性欲の塊。しかも制服姿が何よりも興奮する性癖だった。


 だから《怠惰たいだのベルフェ》と女体化したボクで、ヤツを罠にハメやった。

 自分が騙された、と気がついた時のバーナードのマヌケ顔は、本当に傑作。今思いだしても笑みが抑えられない。


 バーナード=ナックルは《怠惰たいだのベルフェ》の丸の飲みによって、何度も地獄の苦しみを与えてやった。

 最後は“色欲大鬼ラブ・オーガ”の男根によって昇天。今でも地獄の底で、永遠の苦しみを味わっている最中だ。


「そしてレイチェル=ライザールか……」


 その後に、第二のターゲットである《大賢者》レイチェル=ライザールとも遭遇。

 奴もバーナード以上に裏の顔がある、最低なヤツだった。


 ボクは優秀な生徒のフリをして、ヤツの研究室に潜入。罠にハマったフリをして、義体で逆に罠にハメてやった。


 その後は地獄のパーティーの始まり。

怠惰たいだのベルフェ》と生き返った魔族衆のお蔭で、最高のレイチェル=ライザールの断末魔を楽しむことができた。


「だがダークス……か」


 パーティーの最中に乱入してきたのは、白髪の少年“女神の使徒”ダークスだった。

 ヤツは本当に異質な存在。大牛の本性を現していないとはいえ、《怠惰たいだのベルフェ》を圧倒したのだ。


 結果としてボクの機転で、ダークスの秘密の能力を丸裸に。圧倒的な【第七剣セブンス・ソード】で存在ごと消してやったのだ。


 だがダークスとの戦いでは、多くの謎が残っていた。全て解明するには、勇者への復讐以上に困難を極めるだろう。


「ふっ……面白くなってきたな」


 だがボクは笑みが溢れてきた。

 愛する母を、残虐な勇者パーティーに惨殺されたのだ。


 このまま簡単に復讐が終わってたまるか。復讐相手は勇者の残り四人だけではない。


 まずは母さんの住処の情報を、勇者共に売った裏切り者。

 他にも裏で暗躍していた者と、勇者を支援していた国。


 そして全ての元凶である存在“女神”ですら、ボクの復讐のリストに入っているのだ。

 下手したら世界と魔界の全てを、敵に回す可能性もある。


 それを考えたら、今までの勇者二人への復讐は序章。

 大いなる復讐劇の本章は、今ようやく幕開けしたと言って過言でない。


 本番はこれから……そう確信したからこそ、自然と笑みがあふれ出てしまったのだ。


「さて、王都まで“勇者候補らしく”移動していくか」


 特殊能力を使えば、王都まで一瞬で転移可能。だが自分の足で移動することを、あえて選択する。


 何故ならその方が“面白い”から。

 道中で何か……復讐相手に関する情報を、手に入れることが出来るかもしれないからだ。


「ふっふっふっ……待っていろよ、世界の全てよ!」


 こうしてボクはミカエルを旅立つ。


 ◇


 復讐に燃える少年ラインが向かう先は、大陸でも有数の大都市“王都”


 待ち構えるは、更にゲスで強大な力を有する二人の勇者。


 加えて立ちはだかるは、全ての勇者学園を裏で操る“謎の組織”。


 そして介入してくる新たな“女神の使徒”と、暗躍する裏切り者の魔族たちだ。


「待っていてね、母さん。全てヤツの断末魔を、天国に捧げるから!」


 こうして最強の魔の力を手にするラインの復讐は、本章へと突入していくのであった。




































 ◇



 最後まで読んで頂きありがとうございます。


 なんとか今のボクで書けるところまで、書ききることが出来きました!

 このお話は、ここで一度完結になります。


 今後の予定は未定です。

 でも、書籍化したいので、色んな編集部に持ち込みをして、コンテストにも応募もする予定です。


 万が一、成功した時は、また報告します!

 ボク的には、この作品は好きなので、もっと書きたいです!


 ◇


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勇者学園の復讐生、勇者システムと世界の全てに断罪を。愛する家族を勇者パーティーに惨殺された少年、【七大魔人】と【最強の魔剣】を入手し復讐道を歩む ハーーナ殿下@コミカライズ連載中 @haanadenka

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