第27話 外伝 もうひとつの結末

 これは、本編では明かされなかったもう1つの結末。ゲームで言う所の、ハードモードクリア時に見れるトゥルーエンドだ。



 「終わった……のね」

 「うん……そうだね。帰ろう、俺たちの場所に」

 七瀬達2人は荷物を持ち、洋館を後にした。



 ――それから数分後――


 「くっくくっくくくっ……あーははっあはははっ!!」

 全てが終わった後の洋館のロビーに、1人の人物が訪れていた。

 「当然の報いだっ!!勝った2人は見逃してやるが……他の奴らはもがき、苦しみ、恐怖の中死んでいった事だろう!!」

 その人物は笑い狂い、狂気に顔が歪んでいた。

 「自分で手を下せなかったのは残念だが……まぁいい。これで復讐は完了だ!」

 だが男の顔は、何故か晴れていなかった。何かが違う、そう思った。

 (何故だ?復讐を果たしたはずなのに……)

 

 その時、突然出入口の扉が開いた。その人物はバッと振り返る。

 「満足できましたか??」

 そこに居たのは七瀬だった。それだけじゃない。そこには知った顔がいくつもあった。

 「お前ら……っ何故だっ!何故生きてる!?」

 七瀬と一緒にいた人物、それは共に人狼ゲームをしてきた面々。すでに死んでいるはずの人達だった。



 「気は晴れましたか?満足できましたか?」

 「きっさまー……おいっ!これはどういう事だ!!」

 その人物は周りを見渡しながら大声で叫んだ。

 ロビーの奥の方から見知らぬ老人が1人、現れた。

 「おいっこれは一体なんなんだっ!きさま裏切ったのか!!」


 ――やめてっ!!――


 ロビーに女性の声が響き渡った。

 老人のさらに後ろから現れたのは、車椅子に乗った女性。

 「真理子……」

 真理子と呼ばれた人物は、車椅子を動かしてその人物の元へと進んだ。

 「もうやめて?もういいのよ…」

 「でも……」

 「真理子さんは、こんな事望んでません」

 七瀬はその会話に割り込んで言った。

 「なんだとっ!!」

 その人物は七瀬を睨みつけた。

 「あなたの計画を教えてくれたのは……真理子さんなんです」




 ――2週間前――


 (でもなんか面白そうだな、しかも勝てば賞金も貰えるんだ。それはちょっと魅力的だな)

 そんな軽い気持ちで七瀬は参加を決めた時、部屋に電話が鳴り響いた。

 「はいもしもし?」


 ――アナタは、殺されるかもしれません――


 突然かかってきたその電話。七瀬はただのイタズラだろうと切ろうとしたが、電話の主にはそんな感じは見られず、真剣な様子だった。


 ――ある人物が、アナタを……あなた達を殺そうとしています――


 七瀬は不審に思いながらも、しばらくじっと話を聞いていた。


 「アナタは何故教えてくれるんです?」


 ――私は、あの人のフィアンセです。あの人を止めたい!でも、ゲームに参加しないとなると直接殺しにくるかもしれません!力を貸してください!!――




 「そして俺は、俺たちはある計画を立てました」

 「じゃああの死体は……」

 「ただの人形です。アナタはそちらの老人から、『 アナタが自分で殺すのは、計画がバレるリスクがある。自分に任せてくれ』と言われたはずです」

 「お前もグルだったのか!!」

 その人物は老人を睨みつけた。

 「すいません若旦那様。真理子様に助けてくれと泣きつかれまして」

 「監視カメラを1つしか用意しなかったのは、死体が人形だとバレるのを防ぐ為です」

 「俺が館の外に潜んで居ることも知っていたのか……」

 「そうです。もしアナタが外から見に来ても不自然でないように用意したものです」

 「ふん…まんまとしてやられた訳だ」

 「始まりは、2年前の事故…ですね?鈴木さん」



 ――2年前――


 「どうして!?なんでなの!?」

 「俺は君には相応しくないんだよ……」

 豪邸の中、2人の男女が言い合っていた。

 「お父様がそんなに怖い!?駆け落ちしようくらい言えないの!?」

 「君だってその覚悟がホントにあるのか?」

 「なんでそんな事言うのよ!もう知らない

っ」

 女性は家を飛び出し、車に乗って行ってしまった。

 「真理子……これが君の為なんだ……」

 その男――鈴木栄作は真理子が出ていったほうをずっと見つめていた。



 ――1時間後――

 (どうしてあんな事言うの?何故連れて逃げてくれないの?私の事好きじゃないの??)

 真理子は悩みながら高速を走っていた。時間はすでに午後9時をまわり、あたりは暗くなっていた。

 真理子の乗った車が右カーブへ差し掛かったその時、反対車線からライトがさしてきた。

 その刹那、対面から来た観光バスが真理子の車へ突っ込んだ。その事故をかわきりに、次々と後続車が巻き込まれた。

 事故はかなりの規模で、死者も多数出た。



 「それが、本田さんの会社のバスだったんですよね」

 七瀬はその時を振り返るように言った。

 「……そうだ、そしてお前らもその場にいた!なのに、お前らは真理子を助ける事なんてしなかったッ!!救助隊が来るまでッ!そのせいで真理子はッ!!二度と歩けなくなったんだッ!!」

 栄作は右足でおもいっきり地面を踏みつけた。

 「それは違うわ!私たちは真理子さんに気づかなったのよ。気づいていたら助けようとしたわ!」

 「ウソをつくなッ!!」

 「ウソじゃないの!私はあの時、車の中で動けなくなっていたし、まわりも車に囲まれて見つけにくい位置にいたのよ」

 真理子は栄作の言葉を遮るように言った。



 「……うっ……う…ん……いたたッ……」

 真理子は車の中で意識を取り戻した。事故からまだ数分しかたってなかったが、長い時間たっていたように思われた。

 「…そうか、私は事故にあって……いたッ…足が挟まってる。身動きが取れない……」

 両足が挟まれており、脱出するのは1人では困難だった。助けを呼ぼうと覗ける所から見てみたが、周りは車に囲まれて視界が遮られていた。

 真理子が救出されたのは、さらに数時間たってからだった。



 栄作が連絡をもらい病院に駆けつけたのは、さらに時間がたってからだった。

 「真理子ッ!」

 病室の中で目にしたのは重症を負った真理子の姿だった。医者の説明では両足はマヒしてしまい、完治するのは難しいという。もっと早く救出されていれば結果は違ったかもしれないとのかとだった。

 その後警察からも話を聞くことが出来た。観光バスの運転手の居眠りが原因だという。

 「どうして真理子がこんな目に……なんで誰も助けてくれなかったんだ!真理子はこんな苦しみを……一生背負っていくというのに!殺してやるッ!復讐してやるッ!」



 「そしてアナタはその場にいた俺たちを探し出し、殺す計画を立てた」

 「……そうだ、だがただ殺すのではダメだ。苦しみながら、恐怖に支配されながら死ななくては」

 「そこでアナタはそちらにいる真理子さんの執事に協力を求めた」

 「俺1人ではどうしても無理だったからな。だがまさか、協力するフリだけだったなんて……」

 「私は、罪を犯して欲しくなかったんです。お嬢様の為に」

 老人はゆっくり目を閉じ優しく語りかけた。

 「計画を知り、すぐにお嬢様にお知らせしました。」

 「だから私は、さらに助けを借りようと、七瀬さんに連絡をとったの」



 ――お願いです。どうか彼を止めてください!――

 

 「……わかりました。計画の一部始終を教えてください、俺にちょっと考えがあります」



 「そして俺は、関係者全員に連絡を取りました。そこで考えたのが――」

 「変わり身……」

 栄作は七瀬の言葉に被せながら言葉を発した。

 「そうです。執事さんにはアナタに直接手を下さないようにしたほうが良いと助言してもらい、さらに俺たちの変わり身の人形全てを用意してもらいました」

 「若旦那に手を汚させる訳にはいかない、私が殺るからと言いました」

 「あれは全て演技…ッ?全員が計画を知った上で、演技してたって事なのか……」

 「監視カメラを1台も用意出来ないのは流石に不自然かと思って、応接室用に1台だけ取り付けました」

 「あたし達も結構演技うまかったでしょ?」

 沙耶が両手を腰に当てて言った。

 「……ふふっあははははっ完璧に騙されたよ。俺の完敗だな」

 「俺たちを殺した気持ちはどうですか?気持ちは晴れましたか?」

 七瀬は栄作に近寄っていった。

 「いや、全く晴れなかったよ。正直みんなが生きていてホッとしてしまった」

 「うふふっそうでしょう?」

 彩賀も前に進んで来て言った。

 「1つ聞いても良いですか?」

 「何かな?」

 「最初の犠牲者はアナタだった。だけどアナタの人形は用意はしてたものの変わり身させる事は出来なかった。でも死体はあった。あれは本物ですよね?一体……」

 栄作はふぅと1つため息をしてしゃべり始めた。

 「キミは最初にテレビに映っていた人物は誰だと思う?」

 「あれは、録画じゃないんですか?」

 「あれは俺が雇ったチンピラだ。そして俺の替りになってもらった」

 「……うっそー……」

 沙耶が右手を口にあてて言った。

 「どっどうするの!?」

 唯が声を張り上げた。そして全員が何故か七瀬に視線を向けていた。

 「み………」

 「「み…???」」

 「見なかった事にしよう!!ここでは何も事件は起きてない、俺たちは何も知らないッ」

 「「えーーーーッ!?」」

 驚きの声が屋敷中に響き渡った。

 

 「大丈夫です。この館を取り壊してしまいましょう。私めにお任せを」

 と執事は冷静に言った。



 「さぁ!帰ろう!!」

 屋敷を出ると沙耶が1番に声を上げた。

 「さぁ帰ったら美味しいもんいっぱい食べるぞーー!!」

と荒木が言った。

 「荒木さん食い意地ばっかり」

と織花は呆れるばっかりだった。

 「だってー!ゲームが終わるまでずっと別の部屋で待機だったんだよ!?外も出らんないし、そもそも最初に死ぬって酷くないっ!?」

 「それは単純にゲームが下手かったからでしょ?ゲーム自体はみんな真剣にやってたんだから!」

 彩賀が荒木に食ってかかった。

 「まさか七瀬くんが織花ちゃんと恋人だったなんて……」

と良夫は恨めしげな目で七瀬を睨んだ。

 「はいっ♡私と魅夜さんは、愛し合ってるんです!」

と織花が言うと、「「ちょっと待ったー!!」」と声があがった。

 「それはゲームの中だけでしょ!」

と唯が織花を押しのけ、七瀬の右腕に絡みついた。

 「そうよ、あたしは唇奪われたんだから1番権利があるはずよ!」

と沙耶は七瀬の左腕に絡みついた。

 そんな様子を、栄作と真理子は後ろから眺めて、

 「彼らを殺さなくて良かったよ。俺はとんでもない過ちを犯す所だった」

 「ねぇ?私はアナタさえいればそれでいいの。駆け落ちしたって後悔なんかしない」

 真理子は栄作を見上げて言った。

 「いや、駆け落ちはしない」

 「まだそんな事……」

 「きちんとお義父さんに話すよ。絶対君を幸せにすると」

 「……うんッ」

 真理子の頬に雫が1つ、つたっていった。


 そんな2人の前にひとりの男がやって来た。

 「…すまなかったッ!!」

 2人の前で土下座をした平一。

 「君たちには、謝っても謝りきれんッ!私に出来ることなら何でもするッ!」

 2人は顔を見合わせたが、すぐに向き直り、

 「本田さん、もう結構です。俺たちはもう吹っ切れました。もう終わったんです」

 「………ありがとう!!」

 「彼らは俺を身体を張って止めてくれた。俺は、彼らに恥じない生き方をしたい」


 「ダメですー魅夜さんはもう私のものですーーッ!!!」

 山の中には唯と沙耶、そして織花の声が遠くまでこだましていた。










 あとがき


 最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

 頭の悪さ全開の駄文だったと思いますが少しは楽しんで頂けたでしょうか?


 私が人狼ゲームにハマったのはおよそ7年ほど前だったと思います。当日とある小売店に務めていたのですが、そこで人狼ゲームのカードゲームがある事を知りました。

 それからスマホアプリがある事を知り、友人たちと毎日のように飽きもせずやっていました。


 元々ミステリー等が好きだった事もあり、今回自分で書いてみようと思った次第です。

 ラストを2つ描くことが人に受けるかどうかは分かりませんが、構想を考える中で通常よくありそうなラストでは味気ないなと考えました。

 そこで通常のラストに加え、番外編としてもう1つ描いてみたかったラストをトゥルーエンドとして用意しました。


 その2つのエンディングを迎えるために欠かせないキャラクター達の個性を、何とか引き出してやりたいと一生懸命書いたので、皆さんが愛着を持って頂けると幸いです。


 個人的にはメインヒロインである【向井織花】よりも、少しえっちで意外性もある【相沢沙耶】を描いていてとても好きになりましたので、メインヒロインよりも少しひいきしているかもしれません笑


 最後に読んで頂いた皆様に再度お礼を申し上げてあとがきと替えさせていただきます。


 ありがとうございました。

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人狼ゲーム~パーフェクトアクターズ~ みや @kula-Miya

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