おかあさん、あのね
海野ぴゅう
おかあさん、あのね
あたしのおかあさんは毎日かいしゃでしごとして、おうちで家事をしてあたしと3さいの弟のイツキのおせわをしています。
その上、しゅうまつはおとうさんまでおせわするので、おかあさんは大変です。
くちぐせは「いそがしい」です。
いつも忙しそう。あたしはおかあさんがゆっくりねているところを見たことがありません。
あたしはもう4月から小学生になりました。
だから、おかあさんあのね。
あたしは自分のことは自分でします。
朝ごはん、着ていく服のようい、おやつ、しゅくだい、毎日の学校のもちもののじゅんび、おふろ。もちろん一人でねます。
おかあさんのしごとをひとつでもへらしたいと思います。
だから、おかあさん、あのね…
あたしが「抱っこして」って言った時だけはすぐにぎゅっと抱っこしてください。「いそがしい」って言わないで。
イツキはあたしの弟。毎日ほいくえんに通う3さいの男の子。あたしと違って1さいからえんに通うつわものだ。
毎朝えんに行きたくないと泣き、帰りはえんから帰りたくないと泣く弟は、いつもおかあさんにべったりくっついている。
くちぐせは「イヤ!」だ。
イツキはさみしいのだろう、おかあさんせいぶんがふそくしているのかもしれない。だからいつもおかあさんをさがしている。
あたしはもう4月から小学生になりました。
だから、イツキあのね。
これからはあたしといっぱい遊ぼう。二人で悪いことをしたら怒られるのも半分で済むし、楽しいのは倍になるよ。
二人でいたら寂しくなんかない。
だから、イツキ、あのね…
たまにでいいのであたしにおかあさんを独占させてください。あたしはイツキがおかあさんのお腹から出てくるまでおかあさんを独占してたけど、でも、あたしだって不安で心細い時、おかあさんを独占したいんだ。
「イヤだ」って言わないで。
おとうさんは毎日朝早く家を出てしごとに行きます。帰ってくるのも遅いです。3日くらいあたしと顔を合わせないこともあります。
しゅうまつはパソコンの前にずっといてネットショッピングをしています。
くちぐせは「疲れた」です。
確かにおとうさん、ガリガリで今にもたおれそう。いつもイライラしてて、おこられるのであたしと弟はあまりおとうさんのそばに行きません。
あたしはもう4月から小学生になりました。
だから、おとうさんあのね。
どこにも遊びに連れていってくれなくても文句を言いません。友達を家に週末連れてきません。どっか食べに連れてって、とも言いません。
おとうさんのイライラを少しでもへらしたいと思います。
だから、おとうさん、あのね…
「おねえちゃんだから」って言わないでください。
あたしは好きでおねえちゃんになったわけではなくて。ただ、おとうさんの子供なだけです。
なにもしてくれなくていいから、「疲れた」って言わないで。
おかあさん、おとうさん、あのね。
あたしが正直にこうやって言ったのだから、おかあさんもおとうさんもちゃんと話をしてください。
あたしにもんくを言わずに、お互いちょくせつ言ってください。おとななんだから相手をきづかいながら話ができるはずです。
もし傷ついて泣きそうなときは…
あたしがぎゅっとしてあげる。
だって、あたしはもう4月から小学生になったんだから。
おかあさん、あのね 海野ぴゅう @monmorancy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます