失踪中の夫に団地妻、不倫、こってりとしたキーワードが並ぶ作品ながら、人生の機敏を感じさせる大人の小説です。
夫のいなくなった家庭を支える主人公の目の前に突然現れた昔の恋人。家庭不和の逃げ道を主人公に求める上司。そんな男の狡さ弱さを見透かしながら翻弄される主人公。話を追うごとにこの関係はどこへ行きつくのかと胸がざわざわします。
浮気とか不倫といった言葉の底に、一筋縄ではいかない人間関係のもどかしさや脆さ、それをこえた絆のような心情が見え隠れして、どの登場人物にも生身の体温が感じられました。
それは女の視点から描かれる男という生き物への愛おしさの表れなのかも知れません。
ぜひ不器用な大人たちの行き着く先を最後まで見届けてください。
主人公は一人娘を育てる母親だ。しかし夫が失踪してしまい、働きながら日々を送っていた。そんな中、娘の入学式に元カレと再会し、娘同士が仲良しになる。家も近く、元カレは主人公に言い寄って来る。
それと同時期に、今度は職場の既婚男性に言い寄られた主人公は、この男性を遠ざけることが出来たが、元カレとの仲は深まっていく。
元カレには妻がいたが、その妻とは上手くいっておらず、ある秘密も抱えていた。そしてそんな元カレに、主人公も付き合っていた当時を思い出して……。
夫婦の問題は、家族の問題だ。
しかしそうすると、ぎすぎすしたり、どろどろしたりしがちだ。
ところがこの作品は、問題が過ぎ去った後に、人々が幸せになる様子が描かれている。まさに、雨降って地固まる、である。
中盤はあんなにはらはらしたのに、最後はちゃんと収まるべきところに収まっていて、作者様の力量が伺える。
是非、御一読下さい。