プラン1:ちょっとだけ距離を遠くしてみる

さて、あの屈辱的な敗北、いやドローから早1週間。俺はその間にいろいろなことを考えた。俺にとって足りない要素はなんなのか。俺に何をプラスすれば彼女を手に入れられるのか。そしてたどり着いた答えがこれだ。早速実践にいこう。

「おはようございます」

「おお、おはよう」

「あれ? 今日のゆうさん、なんか違いますねえ。」

おっと、紹介が遅れた。俺の名前は竹下裕也。ゆうやだから、周りからはゆうとか、ゆうさんとか言われている。そして、先ほど話したのはターゲットの峰岸優里奈ちゃん。まわりからはゆりちゃんとか、ゆりりんとか、ゆりゆりとか呼ばれている。残念ながら、ゆるゆりというタイプではないらしい。ちなみに、俺が彼女をどう呼んでいるかについては、秘密だ。

「え! なんか違ったっけ?」

「あ、いえ。その」

照れるぜ。早速俺の変化に気づいてくれたのか。これで意識させたも同然だ。はっはっはっは。

「なになに? どうしたって?」

「そんなに自信を持たれると非常に言いづらいんですけど……。1週間前よりも人生がつまらなそうな顔してますよね」

なぜそうなったんだ!! どうしたらそんな評価になるんだ!! さっぱり分からぬ。

「いやいや、何言ってるの。俺はめちゃくちゃ元気だし、別に1週間で変化があったわけでもないというか、ともかく人生はめちゃくちゃ楽しいよ。ベリーベリーエンジョイしてる」

「ああ、良かった。それでこそゆうさんだ。」

く。この作戦は失敗か。

俺が取った行動、それは相手との距離を少しだけ取ってみることだ。なぜなら、男女の距離が近くなりすぎると、恋愛に発展する前に友情というものが成立してしまう。巷で議論されている、男女の友情になるのだ。恋愛関係になる可能性を少しでも残しておくなら、距離を近くしすぎず、ドキドキ要素があるべきだと俺は判断した。そこで、あえていつもとは違う挨拶の入り方をしてみたわけだ。

ちなみに、いつもはこんな感じ。


「あ、ゆうさん。おはようございます」

「おはよう。今日って一限あったんだっけ?」

「はい。今日は月曜日ですから、朝からの日です」


とか、


「おっはよう!」

「あ! うん? ゆうさんか。いきなり肩をたたくなんて、びっくりさせないでくださいよ」

「ははは。なんか朝早くて眠そうだったからちょっと脅かしたんだよ」

「人間違えたら通報されてますからね。おかげで目は冷めたけど」


てな具合である。優しすぎる男として話をつないだり、不用意にいたずらをするのは良くないと思うんだな。だから今回はナチュラルに感情控えめにしてみたんだが、どうやら伝わらなかったようだ。

やりなおしか。

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俺は優しいだけの男じゃない 直也 @noy_0207

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