第7話 全員集合

「はじめまして、ボクがブルース・ウォーグラシアです」


 椅子を蹴飛ばし、テーブルの上へ優雅に腰掛けながら。

 宝石のように鮮やかな青髪をかき上げ、ブルースのアホがキラキラ――ファサッ――と擬音を口ずさみながら自己紹介を始める。


「皆さんも知っての通り、我がウォーグラシア家は50年ほど前に設立された騎士団養成所の第一期生、その筆頭騎士と謳われたヘルグス・ウォーグラシアを開祖とした一族であります。騎士勲位を頂いてまだ歴史が浅いながらも、いずれはボクの代で古くからの名門ランダード家の長女との婚姻によって、より強固な地位と権力を確立します。しかしその為にひとつ、ささやかな障害が――」

「長い。15文字で纏めてくれ」

「えぇ……」


 アホの長々とした自己紹介を、隊長がバッサリと切り捨てた。

 どうもこの人は自分の洒落を馬鹿にされたからか、アホースへの当たりが強いようだ。


 アホースのアホは顎に手をやると、しばし考えこんだ後、おもむろに細長い指先をピンと立てたアホ。


「クロエ・ランダードが邪魔です」

「よろしい。私闘を許可しとう」


 ちがった。

 洒落が言いたいだけだこの人。


「――という訳で死ねシスコンクソ野郎! 貴様がいると婚姻が進まないんだよォォォォォォォォォ!」

「望むところだクソナルシストがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! シロナはお前には渡さぁぁぁぁぁぁん!!」


 それはそれとしてアホを再起不能にする口実が出来たので、遠慮なく便乗させてもらう。

 まずは男としての機能をアホにする。

 すぐさま股間に飛び蹴りを――


「あわわわ……! こ、これ止めなくて良いんデスか?」

「まったく仕方ない奴らね……」


 俺とブルースが空中で互いに飛び蹴りしながらかち合う仲。

 焦るブラウ先輩を横目に、アカーシャがため息交じりにゆっくりと立ち上がる。


「およ? アカーシャ氏ってば珍しく静止する気なん?」

「いや。今なら二人纏めて葬れるかなって」

「真顔で言わないでくだサイ……」


「「ぐわァァァァァァァ俺(ボク)の股間がぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」」


 ――くそったれ!

 ブルースの奴も考えている事が同じだったか畜生!!


 俺たちは同時に地面に倒れ伏して股間を抑えてうずくまった。


「さて。これで親交は深まったかな」


 俺とブルースが戦闘続行不能と判断して、隊長が場を諫めるように両手を軽く叩く。それに反応し、俺たちは先程までとは一転――まるで規律の取れた軍隊のように姿勢を正す。

 問題児の集まりとは言え、仮にも養成所を卒業した身なので、キッチリするべき所はわきまえている。


「――改めて、これで我が第08特別遠征部隊が集まった訳だ。ひとまず全員着席してくれ」


 隊長がそう言うと、一同は部屋の中心にあるテーブルへ腰かける。

 それを見て。隊長は兜の奥から柔らかな眼光を覗かせると、懐から一枚の大きな巻き紙を取り出し、それをテーブルの上へと広げた。


「では本題に入ろうか」

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ダンジョン stay ナイツ!! ―迷宮探索一夜漬けアホ騎士共― 藤塚マーク @Ashari

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