Who are you

桃木昴

Who are you

「綾人が見ている世界とここにいる人達の見ている世界は、同じものだと思う?」


 教室の窓の外。沙耶が校庭を指差す。校庭には、下校中の生徒や部活動をしている生徒達。


「同じだと思う。そうだろう?」


「私と綾人が見ているものは完全に同じなのは確か。でも、本当に目に見えているものがみんな同じだとは限らない」


 沙耶は何が言いたいのだろう。俺とみんなが見ている世界が違って、沙耶と俺が同じ。そもそも、見ている世界が違うとは?


「こんなことは思ったことはない? 鏡に写っている自分は、本当に自分なのか? 目に映っているものは全て本物でみんな同じものなのか」


 何だか、哲学的でSFのようだ。


「そうね。綾人は疑い深かったよね。それなら、実践しに行こう」


 俺は沙耶に手を引かれて教室を出る。


◇◇◇◇


「沙耶! やめよう、どういううつもりなんだ!」


「どういうつもりも何も、実験だよ。信じない綾人の為と私の為」


 屋上のフェンスを乗り越え屋上の淵に立つ沙耶と俺。風が吹くたびにバランスを持っていかれそうになる。


「綾人、私達が周りからどう見えているか分かる?」


「そんなこと、どうだっていいだろ! 戻ろう!」


「ねえ、賭けしましょうよ?」


 こんな状況で賭けをしろと? こいつは何を考えているんだ?


「簡単よ。本物だった方が勝ちね」


「本物……? どういうことだよ!」


「そのままの意味よ。私達のどちらかが想像上の人物で、この世にはいない。だから、本物だった方が勝ち」


 沙耶は俺の手を引き、足を踏み出す。その瞬間、目の前が暗くなった。


◇◇◇◇


「おい! 誰かが屋上から飛び降りたぞ!」


 校庭にいた人物だろう。声が聞こえる。


「二年生の三原沙耶じゃないか!」


「本当だ! でも、どうして」


 口々に憶測を話す生徒達。


「勝った……わ、たしがホンモノ、だ……」


 私は、三原沙耶だ。

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