マドレーヌ
顔のすぐ前にマドレーヌが乗った盆が差し出された。先程焼き上げたばかりなのか、ほんのり湯気が立っている。香ばしい匂いに釣られて礼よりもまず一つ手に取った。なかなかの出来栄えだと思うが、菓子に反して世鷹は不満そうだ。
彼としては以前黒猫が読んでいた挿絵そっくりに作りたかったのに、実際のそれはそこまで膨らまなかったのがお気に召さなかったらしい。一口齧ると、強すぎず弱すぎない甘さが咥内に広がる。人工的な甘さを苦手とする黒猫の事を考慮したのか、砂糖ではなく蜂蜜を練り上げた物らしかった。
「兄さんみたいにはいかないなぁ」
「美味しいですよ、有り難うございます」
「今度はうまく焼いてみせるから、楽しみにしててね」
妻の言葉にようやく眉間の皺を解いたが、唇はとんがったままだった。
猫と狼の食卓 狂言巡 @k-meguri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。猫と狼の食卓の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます