第16話

新月の夜

ふたつの人影

夜よりもさらに濃い闇を

かき分けながら走る


その手はかたく結ばれ

決して離れようとはしない


聞こえるのはふたつの足音と

かすかなふたつの息遣い

ただ走る

ただ走る

つながれた手だけを信じて


闇はさらに濃くなり

もう足下さえ見えない

暗がりに紛れるふたり

空には瞬く星

風は凪いでいる


闇を切り裂くサーチライト

浮かび上がる二人の姿

手を取り合い逃げる

それでもライトは延々と

二人をとらえ続け


抱きしめあう二人

消えるライト

響く銃声

あたりは再び闇に閉ざされた


二人は闇に包まれた

瞬く星だけが

二人の全てを見ていた






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サヨウナラ、とキミは言った。 マフユフミ @winterday

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説