スパイ小説のハラハラをおいしいところだけ。

 迫り来るリミット・想定外のアクシデント・守るべきもの。
 『ふんころがしは忙しい』は上記のようなハラハラする展開が描かれている。
 この小説のキャッチコピーを見て、あなたはきっと『うんこ』という言葉に目を奪われただろう。そして、一見かわいらしくも見えるタイトルに童話の優しさを感じたかも知れない。

 しかし、この小説は一貫してオトナな内容である。
 内容に”スカトロ”の描写を含む以上は読む人間を選んでくる。
 物語に冗長さはなく、テンポ良く読むことができる。私はキャッチコピーに惹かれ読み始めると、気がつけば読み終わっていた。

 『ひとこと紹介』にも書いたが、
 この物語は時間に追われ、アクシデントをかいくぐり、守るべきもののために行動するスパイ映画のような作品のように思える。
 短い文章の中に主要人物の心の揺れと、のっぴきならない状況が詰め込まれ、読者はこう思うだろう。

「あれ?これ、うんこを運んでる話だよね?」