第71話 3か月後
毎度おなじみシデリアの冒険者ギルド。
「この任務はAクラス指名依頼というか体で『ふわふらたんぽこ』の皆さんに御願いしたいのです。それが最も効率的で費用も安く済みますので。ですからよろしくお願いしますわ」
おなじみ3番のブースで
内容は道路建設依頼。
ネイプルから東へ向かい、カナル村を経由し、そこから南へ向かってカルフレーロヘ至る道だ。
カナル村は今まで道路が無かった。
転移門のおかげで実質ネイプルの一部だったのだが、この度正規の道路を作ろうという話だ。
長さはおよそ
報奨金は正金貨20枚。
冒険者への報奨金として考えれば異常な額。
でも通常の道路建設費用と比べれば遥かに安い。
まあ俺達の任務としては色々妥当な額だと思う。
「わかりました。ただ出来ればカナル村の警備任務に就いているサリナ以下3人とも一緒にこの仕事をしたいと思うのですけれど」
「勿論ですわ。今のふわふらたんぽこは6人パーティですから。その辺はカナル村の方の出張所に連絡しておきますね。あとこれが道路の予定図と予定地図です。ただ地形の起伏等によって現在使用している土地以外ならある程度の計画変更はして大丈夫ですわ」
うーん。
ラシアさん、つい1週間前に復帰したのだけれど前にこのギルドにいた時と同じ感じだよな。
新政府作業をしていた時とは大分雰囲気が違う。
あの時は
でも今は特に意識しなければ普通の20代前半の事務担当の女性という感じだ。
やっぱりある程度の人にはわかるように魔法で
どっちが本当のラシアさんなんだろう。
疑問に思うが今の俺はそんな事は聞かない方がいいとわかっている。
女にはいくつもの顔があるのだ。
今は女性である俺にはその事がわかっている。
書類一式をざっと確認する。
あれ?
「引き受けますけれど、期間が書いていないですけれどいいんですか」
「どうせ面倒だから今週中、多分3日もしないうちにやってしまいますよね。ですのであえて期間は記載しないでおきました」
なるほど流石ラシアさん、よくわかっている。
俺は書類等を収納庫に入れ立ち上がる。
「それでは失礼します」
「お願いします。リーザ達にもよろしくお伝えください」
さてそれじゃカナル村へ行くとするか。
いつも空の事務所へ行って、ロッカーを通ってカナル村の家へ。
見ると部屋にいるのは3人。
サリナ、カルミーネ君にリーザさん。
3人とも新しい
つまりはまあ、スカーフの色以外は同一のブレザー。
この中ではカルミーネ君が一番似合っているのがなんとも言えない。
でもリーザさんの微妙に似合って無さも色々イイ! 感じだ。
ちょっと間違った&怪しい色気を醸し出している処なんか特に。
「あれ、ロザンナとカタリナは?」
「お仕事をするって2人でパトロール飛行に行きました」
「
サリナとカルミーネ君報告ありがとう。
まったく好き勝手しているよなロザンナは。
あいつ見かけはともかく中身は18歳、いや19歳だぞ。
でも今まで苦労したんだからまあいいか。
俺も甘いなとは思うけれど仕方ない。
あと好き勝手している奴はもう1人いる。
仕事せず街へ行ってふらふらしていたり、この家でのたのたしていたりする奴だ。
「リーザさんもそろそろ仕事をしたらどうですか?」
「やっているわよ。注意人物の監視業務」
注意人物とは勿論俺だ。
「そんなお金にならない仕事じゃなくて、少しは冒険者らしいお仕事とか」
「ここんとこずーっと真面目にギルドや難民事務所で働いたからね。その前も宮仕えしていたし。だから少しくらいはいっかなと思って」
「まさかと思うけれどそれって
「どうかな」
まったくもう。
「ところでふわふらたんぽこに指名依頼が入りました。依頼元はシデリアの冒険者ギルドで、報奨金はなんと正金貨20枚です」
「あ、こっちでもまもなく指名依頼が入りそうよ。こっちは正金貨30枚かな」
リーザさんがそんな事を言う。
「参考までにそっちはどんなお仕事ですか」
「カナル村とセットになる村残り3つと中心になる街の造成だって。今、ネイプルの役所で図面を作っているらしいわ。街の建物については業者に仕事させるけれど、村の方についてはカナル村と同じように建物まで全部セットにだって。今色々計画を練っているから図面一式が出来たらよろしくって」
うーむ。
「こっちの依頼も土木工事です。ネイプルからカナル村を通ってカルフレーロへ向かう道の建設依頼で」
「何か結局、この辺の開拓地は全部うち任せね」
確かにそうなるよな。
「でもまあいいじゃないですか。それなりの収入も入りますし」
「国とかにしたら大助かりだわ。本来の予算と桁が違う額で工事完了だものね」
そうだけれど、まあいいか。
お互いWIN-WINという事で。
「とったどー!」
「今夜は猪鍋ですわ。あ、ジョアンナお姉さまお帰りなさいませ」
カタリナ達が帰ってきたようだ。
「ここで獲った魔獣は出張所預かりじゃなかったっけ?」
「勿論そうですわ。でも預かって貰った後に買う事も出来ますわ。獲って解体した人間が一番いい部位を確保できるのです。あと内臓肉は解体者が独占出来ます。お姉様が異世界のモツ料理の本を翻訳してくれたおかげで今晩は色々楽しめます」
「モツ煮、シロコロ、レーバ刺し~♪」
何だカタリナその怪しげな歌は。
「あと全員でやる仕事が入ったぞ。ネイプルからこの村を通ってカルフレーロヘ行く道を作るの。その間はここの警備の仕事を休んでいいって」
「なら新しい歌とふぉーめーしょん、みんなでやろう!」
え”っ!
「みんなって私も?」
油断していたリーザが思わずそう疑問を発するけれど。
「もちろん!」
カタリナが大きく頷く。
ちなみにこの手の発言に関してはカタリナ様の言葉は絶対だ。
リーザさん、がっくり。
「それじゃあジョアンナお姉ちゃんがこの前持ってきたご本のふぉーめーしょん、ご飯を食べたらみんなで練習する!」
え”っ!
「あれって結構長くなかったっけ」
「でもかわいい! だからみんなでうたっておどる!」
そうですか。
でも正直、歌いながら踊るのって結構難しいんだよな。
カタリナ様の指導とチェック、厳しいし。
「でもまずはご飯だよね」
「今日の食事当番はリーザさんですけれど」
リーザさん、一瞬はっとした表情になる。
「忘れていた! ねえサリナちゃんかジョアンナさん、もしお弁当のストックがあったら人数分回してくれると嬉しいな」
「わかりました。取り敢えず
「カタリナ、ミンチ肉焼きがいい!」
「まだ残っているかな」
俺はテーブルの上にストックしていた弁当を出す。
何やかんや言って、今の生活は楽しい。
そういう意味では以前の俺が立てた美少女受肉実施計画、成功だったなと思う。
内容的にはこの中の誰にもおおやけにできないけれど。
勿論この先どうなるかなんてわからない。
でも昔思っていたのよりも今の方が楽しいのは事実だ。
だから俺は心の中で祈る。
どうか今の生活が出来るだけ長く続きますようにと。
美受肉してしまった! ~俺の異世界魔法少女伝~ 於田縫紀 @otanuki
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